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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2012/10/21 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

さよならのためだけに

著者:我孫子武丸

出版社:徳間書店

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さよならのためだけに

私は次男坊だ。私たちの世代ではそれ程珍しくもなかったが、少子化の影響で今や絶滅危惧種に指定されているらしい。めったに出会えない希少価値のある生き物の為、婚活中の女性は金の草鞋を履いて探しているとも聞く。
もう少し後に生まれていたら売り手市場だったのに残念だ。こんな私でも、きっと引く手あまたで「相手を選べる」立場だったはずだ。

誰だろう?遠慮がちに事務所に入って来た、あの声の小さい大人しそうな男。
どうもその男は、もうすぐ転勤して来る社員らしい。婚活中の彼女(現在のわが妻)は早速リサーチを始めた。
まずは独身かどうかだが、これはクリア。ならば年齢は・・・、ふ~ん年下か、まぁ、独身の男でさえあればこの際よしとする。見た目も気にしないことにする。性格は?趣味は?兄弟は?同僚から情報を集め、コイツだ!と思った。普通次男坊と言えばもっと「やんちゃ」なはずだが、全くそんな感じはない。自分の意のままに操れる気の弱い次男坊。遂に見つけた。
その後、彼女は熱演した。肉食系の朝ドラのヒロインを。

児童書売場で戯れる幼い子どもを見ながら、聖母のごとくフッと微笑む彼女。実は、子ども好きを印象付けるのにベストな横顔が見せられるよう、レジ内での立ち位置を計算してさり気なく隣に来ていたのだ。
店長に怒られている時も、何処から聞きつけたのか何気に横に寄り添って来た。これは「つり橋効果」を狙ったものだ。一緒につり橋を渡り、恐怖のドキドキ感を恋のドキドキ感と勘違いさせるテクニックだ。
極めつきは押しかけ女房宣言という荒業。わが両親への直談判だった。

まさか長男を飛び越し次男が先に、尚且つその相手は長男よりも年上。わが家は上を下への大騒ぎになった。慎ましく穏やかに暮らしていた一家は皆浮き足立った。
次男が初めて家に連れてきた彼女は、嵐を呼ぶ女だった。

「困ったのう、急じゃのう(笑)」、両親は嬉しそうだった。そして面白がっていた。何にせよ次男だ。長男ほど慎重になる必要はない。それに実際に会ってみて分った。文字通りしっかりした姉さん女房、頼りない次男にはピッタリだと感じた。
彼女はわが家に久しぶりに訪れた、華やかな春の嵐だった。

舞台は近未来。少子晩婚化に悩む先進諸国は、結婚仲介ビジネスを国策事業化していた。生涯の伴侶を見つけてくれるのはPM(パービリオン・マッチメイカー)社。従来のアンケート診断のほか遺伝子診断も活用し、精度の高いマッチングを行うことで国民に信頼され、浸透している。中でも特A判定という「運命の相手」が見つかったカップルの結婚率は100%、離婚例は存在しない。

だがここに、この結婚が間違いだったと感じた特A判定の夫婦がいた。「だめだ、別れよう」、「明日必ずね」、水元と妻の月(ルナ)。ハネムーンから戻った夜のことだった。
PM社の画期的相性判定で結ばれた男女に離婚はありえない。さらにありえないことに、水元自身が当のPM社の社員だった。二人の前に立ちはだかる、離婚を阻止しようとする巨大な敵。彼らは手段を選ばない。初めはさりげなく、そして次第に激しく、深く、執拗に迫ってくる。

離婚に向け「ともに手をたずさえて」闘うことになる水元と月。皮肉なことに、まるで本物の夫婦のようにお互いを思いやるようになっていく。果たして二人の相性は最高、最悪のどちらだったのか?そして二人は「無事に」離婚できるのか?
 
恋愛、そして結婚に「すったもんだ」はつきものだ。結局は「すったもんだ」を、その相手と一緒に乗り越えられるかどうか。言い換えれば「すったもんだ」を一緒に楽しめ、コメディに変えてしまえるかどうかだ。
それこそが、相性が良い悪いということでもあるのだが、実際に様々な「すったもんだ」に出会ってみなければ分らないのだ。つまり、「結婚するとはどういうことか」は、「結婚しなければ」分からないことなのだ。やはり恋愛も結婚も、謎だらけのミステリなのだ。

我孫子武丸・著「さよならのためだけに」は、本邦初の「本格恋愛ミステリ」。解説の三島政幸君は、私のカワイイ?後輩だ。本格ミステリ(と「AKB48」)の更なる普及に向け、日夜奮闘している。
間違った結婚はあるかも知れないが、彼のおススメ本には間違いはない。

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