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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2012/11/12 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


コミック

オレの宇宙はまだまだ遠い

著者:益田ミリ

出版社:講談社

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オレの宇宙はまだまだ遠い

わが家には、オカメインコのメメちゃんとマメルリハの「わさび」という小鳥、そしてロシアリクガメのトンちゃんがいる。 マメルリハの「わさび」にだけ、“ちゃん”をつけず呼んでいるのは、私のライバルだからだ。
奥さんが「わさび」と戯れる時、これまで聞いたことも無い甘くて優しい声で語りかけている。なぜ私にも同じ対応をしてくれないのか!涙ながらに訴えると、「小鳥に焼きもちやいてどうするんよー」と笑われた。

しかし彼女のお世話優先順位ランキングでは、一番が動物で2番が子ども、私は最下位だ。私が1位だったのは過去の栄光で、子どもが生まれるまでの2年間だけだ。以後20年以上の長きにわたって最下位が定着している。
奥さんの気を引くため、グレてやろうかと本気で思ったこともある。

それでも私がグレないでいられるのは、職場では大変な人気があるからだ。
店長!店長!と皆に毎日何度も呼ばれている。特に忙しい時は、スタッフの間で私の奪い合いが起こるのだ。職場にいるときの私の人気は、チャン・グンソクに匹敵している。違いは笑福亭笑瓶に似ているという私の見た目のみ。ほんの僅かなことだ。

もちろんスタッフから頻繁に呼ばれるだけではなく、出版社や取次などの取引業者さんからも「店長をお願いします」と電話が多い。更に本社からも電話がかかってくる。
やれやれ人気者は辛いぜ、受話器を取ると本社・商品部Nさんの感情を抑えたクールな声が聞こえてくる。
「店長、今日の午前中が締め切りだった在庫報告が、まだ届いていません。」

本社からの電話に出る緊張感も含め、職場にいるのが楽しい。スタッフと一緒に、お客様に楽しんで頂くための売り場づくりやPOPに工夫を凝らすこと。イベントやフェアを企画して、あれこれ試行錯誤を繰り返しながら全員で取り組むこと。どの本をどれだけ注文するか悩んでいる過程も楽しい。どの場所に置くのが良いのかと、棚のレイアウトを考える時はワクワクする。タイミングよくベストセラーを仕入れ、「店長やりますね~」と褒めてもらえるのも嬉しい。
毎日、本に触れて本に囲まれている職場。何より自分が好きな本を店頭で、コラムでいくらでも紹介できるのだ。こんな楽しい仕事はない。

主人公の土田新二くんは32歳の独身。書店に勤めて10年、結婚願望も「けっこう、ある」が、彼女いない歴6年。“いい人”とよく言われるタイプで、ちょっと影が薄い方。
土田くんは将来、そして人生について考えている。

― 誰かよりマシ、だから幸せ。そういう生き方は違うんだよな ―

何か違うという漠然とした感じはするが、答えは出ない。独り言のように自問自答を続ける土田くん。でも考え続けるとヒントが見つかる。それはお客様からのお問い合わせやフェアの選定、合コンでの会話や参考のために見てまわった他の書店で見つけた本の中にあった。
考え続け感じ続け、この生活を、人生を、今のまま悩みながらも続けていくことが一番大切なのだ。

よく考えると奥さんの態度は、逆に私への配慮かもしれないと思えてきた。家庭ではあまり「かまってもらえない」ことが、職場では皆に頼られて奪い合いにもなる店長という立場であることを際立たせてくれているのだ。
それがあるから「よし、仕事に行こう!」と、今日も楽しく職場に向かえるのだ。そう、ものは考えようなのだ。

「空」と「人生」の一番の違いは何だか知ってるかい?
「空」は誰のもんでもない、「人生」は自分のもんだ
「人生」はコントロールが効く。
(『宇宙兄弟』の名言 byデニール・ヤング)

「オレの宇宙」は、意外と近くにあるかも知れないよ、土田くん。

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