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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


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2013/03/04 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

フランシスのいえで

著者:ラッセル・ホーバン/作リリアン・ホーバン/絵

出版社:好学社

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フランシスのいえで

娘が幼い頃、ままごと遊びをする時はいつも薄幸の少女を演じていた。
「お母さんが病気なの、だから私がご飯つくるの・・・」とか、「お父さんがいなくなったの、だから私が働いてるの・・・」とか、逆境にめげず健気に頑張る少女を、しおらしく演じていた。
奥さんが情操教育として「〇〇〇の少女△△△」といった類の名作アニメのビデオを多数見せていたので、その影響を受けていたのだ。

それにしても女の子は生まれながらにして女優なのだと感心したが、娘の演技はどちらかと言えば涙よりも笑いを誘っていた。
奥さんが見せていた名作アニメの他に、私が楽しみにしていた「よしもと新喜劇」も一緒に見ていたので、その影響も大いに受けていたのだろう。

娘の4歳下に息子が生まれた。今度は頼りになるお姉ちゃんを張り切って演じ始めた。何かと面倒をみてくれるのだが、いつもヒヤヒヤさせられた。

友だちに自慢したくて、「この子、わたしの弟よ~!」と無理やり抱っこして走り出してはそのまますっ転び、あろうことか弟を顔面から落とした。
ハイハイをするようになった弟の首に紐を結び、「さあ、お散歩しましょ」と玄関から出ようとした時は流石に止めた。

でも娘は弟に焼きもちをやくことはなかった。私たちと一緒になって育てている気分になっていたのだ。
親にとって、それが何よりの助けになっていたのは、言うまでもない。

「フランシスのいえで」 ラッセル・ホーバン/作、リリアン・ホーバン/絵、松岡享子/訳

妹が生まれ、フランシスはお姉さんになりました。でも、なぜか家の様子がこれまでと変わってきました。

「ふうん。このごろ うちは いろんなことが おもうようにいかなくなったのね。きる ふくはないし、ほしぶどうはないし。あたし、いえでしようかしら?」
その日、晩ごはんの後、フランシスはリュックサックに家出の荷物をつめました。

「じゃ、あたし これから いえでします。さようなら。いってまいります。」と、フランシスは言いました。「どこへ いくんだい?」と、お父さんは聞きました。
「しょくどうの テーブルのした。あそこが いちばん いいと おもうの。」

食堂のテーブルの下で、フランシスは両親の会話を聞きます。

「しかし、なんだねえ。フランシスが いないと、うちのなかが いつもと すっかり ちがってしまった かんじだねえ。」
「あのこが いないと、うちのなかが がらーんとして、なんだか わすれものを したみたい。グローリアでさえ、まだ あんなに ちいさいのに、それが わかるらしいですよ。」
「そういえば、いまも ちょっと ないてるようだね」
「そりゃ、ちいさいこは、おねえさんを たよりに してますものねえ。」 

この両親の対応が素晴らしい。叱ったり、言い聞かせたりするわけではない。自分の存在を肯定してくれる親が、いつもそばに居ることをごく自然にわからせている。
わが娘や息子にも、こんな対応をしてやりたかったと奥さんと話をすることがある。もう随分と大きく・・・というか娘は成人したが、絵本は今でも子育てのお手本だ。
そしてこの絵本が今でも、うち奥さんの一番のお気に入りである。

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