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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


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本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2014/01/05 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

七帝柔道記

著者:増田俊也

出版社:角川書店

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七帝柔道記

練習の締めくくり、主将の号令で畳に仰向けに寝て頭を浮かせる、言ってみればエア枕状態だ。簡単なようだが、これが大変キツイ。頭がこんなに重たいものだとは知らなかった。先輩が上からぐいぐい押してくる。歯を食いしばって耐える。
更に足上げが加わる。踵が畳につかないよう少しだけ浮かすのだ。これは足よりも腹筋を鍛えるものだ。隣からうめき声が聞こえてくる。先輩が順番に腹の上に乗っているのだ。次は自分の番だ。恐い、辛い。今すぐ逃げ出したい。大学の体育会の部活になんか入るんじゃなかった。

「辞めんなよ。最後まで残った者だけが感じられるものがあるんだ。」、真意のほどは分からない。確かめるには続けるしかない。
辞めていった者が何人もいる。でも隣には先輩が腹の上で足踏みするのを、うめき声をあげ顔を歪めながらも耐えている同期がいる。負けられない。そして、こいつらと一緒に最後まで残った者だけが感じられる何かを味わいたい。
覚悟を決め、まだわずかに残っていた気力と体力のすべてを腹筋に注いだ。

「七帝柔道記」 増田俊也・著 角川書店・刊

辛かった。痛々しくて読んでいられない。何で、何でそこまでするのか。高専柔道の流れをくむ寝技中心の七帝柔道。
「動け。必死になってみろ」、参ったなし、容赦もなし。練習中に何度も締め落とされる。尋常じゃない。それでも彼らは、ただ一勝の為に、それだけの為に青春を捧げていく。

練習量が全てを決定する、この言葉を信じてついて行っていいのか。

「自分で自分の限界線を引いちゃ絶対にそこは超えられん。限界をひいたらそこで終わりじゃ」
「僕たちはどうしたらいいんですか・・・」
「進むんじゃ」、「後ろを振り返りながら進みんさい」

― どうして彼らは、これほどまで弱いのに、誰よりも強いのか。これほどまで地に這いつくばっているのに、誰よりも気高いのか ― 万城目学

練習量が全てを決定する、読後はこの言葉を信じていいと感じるはずだ。全てとは、もちろん柔道のことばかりではない、人生における全てに通じることなのだ。

随分と遅く年末にスマホデビューした私は、同僚に勧められ何気にLINEというものを始めた。数日して懐かしい名前からメッセージが届いた。「元気でやっとるか!」
最後まで残った者だけが得られるあの感動を、一緒に味わった同期からだ。

あの大学の道場で、ともに汗と涙を流した同期に、厳しかった先輩に、伝統を受け継いでくれた後輩に、ぜひ読んで欲しい。そして、ともにまた味わって欲しい、あの感動を。

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