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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2014/02/16 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

ゴリラの冷や汗

著者:TeamGATHERProject

出版社:夜間飛行

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ゴリラの冷や汗

家族でカラオケに行くことになった。高校生の息子は用事があり一緒に行けないとのことで、娘が実家の父を誘った。断るかと思ったが可愛い孫娘からなので、「おー、行くど~」と二つ返事だった。ただ妻はちょっと複雑な表情だった。
 
娘がはしゃいでいる。受付に行き一人で判断してどんどん決めている。案外エネルギッシュに動くタイプだったのだ。
「その人は自分の直感に素直に従い、前進することのできるパワフルな人です。」
類人猿分類ではチンパンジーに当てはまるらしい。

妻と娘に挟まれて席に着く。「恋するフォーチュンクッキー」を娘と一緒に歌いたいという願いを秘めた私は、悟ってもらいたくて、ただじっと娘を見つめていた。
「その人は人々と対等に向き合い、いつも控えめで秩序を守るもの静かな人です。」
言い出せなくてモジモジしている私は、感情をあまり表現しないゴリラなのだ。

娘の「いきものがかり」メドレーの次は、父の十八番「北国の春」だ。入れ歯が合わない様で歌詞はあまり聞き取れないが、元気そうでなりよりだ。昭和6年生まれ、もうすぐ83歳。私にとっては恐い父だったが、今では好々爺・・・と自分で言っている。
「その人は自分の気持ちを素直に表現する無邪気な人です。」
歳をとった父は、みんなの輪の中で楽しく話が出来るフレンドリーなボノボになっていた。

腕を引っ張られ振り向くと妻がマイクを差し出していた。一緒に歌えというのだ。娘の方が良かったけど仕方ない。モニターを見ると加山雄三「旅人よ」が始まろうとしていた。なんとも渋い選曲だ。
二人ともそれほど上手くはない。でも不思議と息は合っているのだ。娘も感心している。結婚したのは平成元年だから四半世紀が過ぎた。もう少ししたら独身だった年月よりも、彼女と一緒にいる方が長くなるのだ。私のことも自分のこともよく知っている妻は、二人で歌うのに無理のない曲を選んだのだ。
「その人は静かに物事を見つめ、理解し、納得するまで頑張れるひたむきな人です。」
意外にも妻は、冷静に判断し行動できるオランウータンだった。

「ゴリラの冷や汗」 Team GATHER Project 著  夜間飛行・刊

類人猿を知ることが、人間を知る近道である。

オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ボノボ、4種の大型類人猿の行動傾向の違いを人間にあてはめた性格分類「類人猿分類」(GATHER)。シンプルだけど実践的で、会社や家庭、あるいは社会全体に役立つ性格分類と言われている。

行動傾向が違う彼ら4種の大型類人猿は、互いに交じり合うこともなく、それぞれ別々に社会を営み、生活をしている。同じ行動傾向を持つものだけでグループを形成しているので、そこでは性質の違いからくる問題は生じない。
だが人間社会ではそうはいかない。思考や志向、行動が全く違うもの同士がひとつの社会を営んでいる。その為に問題が起きる。自分たちが住む森(会社・家族・サークルetc・・・)を豊かなものにしていくには、メンバーがそれぞれバランスよく役割を果たし、協力し合うことが不可欠なのだ。特に「会社」という組織では、それぞれの個性を活かせているかどうかで業績が随分と変わってくる。

1タイプだけが活躍する会社にはいずれ限界がくる。成長している会社は、社員同士が互いに各タイプの得意分野、強み、弱みを理解し、相手を活かすにはどうしたらいいか、自分がどう振る舞えばチームとして力が増すのかを考えている。

本書はビジネス書である。でも読む人を限定しない。年齢、性別、性格を問わない。どんなタイプの人でも読みやすいと感じるはずだ。それは自分にとって親近感を覚えるキャラクター、言わば自分自身が物語に出てくるからだ。
 
自分自身を知ることが、人間を知る近道である、とも言えるのだ。

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