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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2014/10/08 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

屋上と、犬と、ぼくたちと

著者:若月 香

出版社:光文社

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屋上と、犬と、ぼくたちと

息子を本好きに仕向けようと、中学生から高校生にかけて読書会と称しては同じ本を読み、感想を言い合っていた。
彼は「武士道シックスティーン」や「走れ!T校バスケットボール部」など、部活小説のシリーズものが好きでよく読んでいた。中高生らしく友人とはラノベやコミックの貸し借りもしていたが、「のぼうの城」や「哄う合戦屋」など時代小説も読んでいた。
そして、このコラムで紹介した「陽だまりの彼女」、「ビア・ボーイ」、「ひろいもの」、「家日和」、「モノレールねこ」、「とんび」など、私が勧める本は全部面白いと言ってくれた。
高校受験の際に「きみの友だち」から出題され、「お父さんが重松清は絶対入試に出ると言っていたのは本当だった!読んでてよかった。」と尊敬の眼差しで見られたこともあった。

そんな息子が働くようになってからは、あまり本を読まなくなった。
今、彼は自分の車を持ち行動範囲がグッと広がった。休みの日には大概何処かへドライブに出掛けている。たまに家にいて静かにしているので、本を読んでいるのかと思い部屋を覗くと、パソコン、スマホ、タブレットの三種の神器を机に並べ、ダウンロードだ、同期だのと夢中になってつついている。

息子が学生の時、「本なら買ってあげるけど、ゲーム機や携帯電話は自分でお金を稼ぐようになってから買いなさい。」と言って我慢させてきた。その反動か、実際にお金を得る様になると、あからさまに「本」以外のものを嬉々として買っている。
彼が自分のお金で何を買おうが自由だ。それに給料から生活費として家に入れてくれているので、あまり強くも言えない。
どうしたら再び本に興味が向くのだろうか。息子がネットに向かう時間を減らしてでも読みたくなる本、服やガソリン代を節約してでも買って読みたくなるのはどんな本なのか?

「屋上と、犬と、ぼくたちと」 若月 香・著 光文社・刊

― 非常にテンポのよい文体。少年たちの様子や、彼らが成人して若者たちとなった際の会話等、現代青年群像の描写も手馴れていて、上手と感じた。―
第6回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞選評・島田荘司

専門学生の野村修司は、一人暮らしのアパートの新聞受けにはさまれていた謎のメモを、バイト先のミステリー好きの店長に見せた。
修司は小学生の時、拾った子犬を遊び場だったビルの「屋上の屋上」で仲間と一緒に内緒で飼っていたが、台風の日に子犬の様子を見に行った仲間の一人が転落死するという体験をしていた。
謎のメモは、その転落死と関係があるのではないか。メモの主を突き止めようと店長に促された修司は、自身と仲間に起こった不幸な過去を思い出し、語り始める。

本作品は、地元・福山市出身の作家による「懐かしくてほろ苦い」青春ミステリー。同世代の主人公は、息子にとって親近感を覚えるのではないか。秘密基地、仲間との繋がり、恋心。そして、まだ若いとはいえ、それぞれに引きずっている過去、将来への不安もある。それは息子も一緒だと思う。生まれ育った街を外から見た感覚は、まだ地元に住み親と同居している息子には分からないかもしれないが、何れは経験するはずだ。
舞台となっている駅前のビルは、再開発前の繊維ビルにちがいない。そのことで盛り上がっているのは私たちの年代の方だが、それでも作品で語られる風景に興味が湧くはずだ。

本好きに戻った息子に「おかえり!」と言ってみたい。そして「ようこそ!ミステリーの世界に」と・・・
そんなことを思いながら本書を選び、息子に勧めた。

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