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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


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本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2015/01/06 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

群青のとき

著者:今井絵美子

出版社:角川書店

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群青のとき

本書をどんな言葉で紹介すれば良いかと考えていた時、この台詞に出逢いました。

本は文字ではない、本は人じゃ
開けば触れることが出来る、他の人の考えに、
江戸におる人にも、外国におる人にも、
とうの昔に亡くなった人にも出逢うことが出来る。
同じく悩んで、同じく答えを見つけようとした
誰かがおって教えてくれる。
その人の目で見た世の中の、
人生のあらゆることを教えてくれる。
生きるんに迷うとるんは、自分独りじゃないことを・・・
― NHK大河ドラマ「花燃ゆ」第1話より ―

時は幕末、主人公は備後福山藩第7代藩主・阿部正弘。阿部家は代々老中を輩出する家柄。正弘も25歳で幕府の老中に、27歳で老中首座(現在の総理大臣)に就任。
だが彼を待ち受けていたのは、黒船をはじめ度重なる外国船の来航、強大な欧米列強に対する攘夷派の強硬論、逼迫する財政に高まる内政不安。
幕府開設二百四十余年、今や最大の危機を迎えようとしているこの時期に、幸か不幸か、権力を握ってしまった正弘。

「我が力で、この封建的体制を変えることはできないものだろうか」

今までと違う政権運営を目指さなければならない。その為には独裁的であってはならず、前向きでなければならない。多数の意見を汲み上げ、彼らの支持に支えられた政権を目指すことこそ肝要。正弘は身分の上下にかかわらず能力のある者に重要なポストを任せた。また後進の育成のため講武場、海軍伝習所、洋学所を設置、そして藩校「誠之館」を創設し、藩士だけでなく身分に関係なく教育を行った。

時間をかけ多くの人の意見を聞く正弘の姿勢は、時に口さがない連中から「のらりくらりと角のない人物」と陰口を叩かれる。しかし相反する意見を持つ人の話であっても、耳を傾けるところは傾け、着実に自らの目指す方向へと世人を導いていく。

たとえ福山藩の側近であっても攘夷論者はいる。石川和介(頼山陽門下、後の関藤藤陰)は開明的な正弘の考えに、ときとしてついていけなくなる。そんな時は夜を徹して議論する。正弘は対極にある意見に、決して真っ向から反対しようとしない。異なる意見の中に、なにがしかの真実を掴もうと目を輝かせて聞いているのである。石川はそんな正弘に信頼を寄せている。
考え方が違おうと構わない。阿部正弘という、その為人(ひととなり)が好きなのだ。

「夜明け前、一瞬だけであるが、空が群青に輝くときがある。その青さは大望を秘めた青じゃ」
 
『群青のとき』は鎖国を終わらせ、日本を夜明けへと導いた阿部正弘の人生を描ききった著者初の本格歴史時代小説。
まさに「本は人」と思わせてくれる1冊。

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