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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2015/01/22 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


コミック

スイーツ本部長 一ノ瀬櫂

著者:佐々木善章

出版社:講談社

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スイーツ本部長 一ノ瀬櫂

文字で表現する時、ハートマークは大きな影響力を持っている。どのような台詞、どんな単語であっても、最後に♥と付けるだけで言葉の意味も雰囲気もガラッと変えてしまうのだ。
例えば「バカ」という台詞。「バカ!」と「バカ♥」では、あきらかに違う。特に女性が男性に向けて言う場面、それは真逆のことを指し示す。

その時、女性がうつむき加減で小声ならば、なお良い。夕暮れ、もしくは真夜中の公園。いや、今は寒いのでドライブ中の車内であるのが好ましい。夜景の見える高台にある駐車場。ちょっとした勘違いから言い争う2人。やがて誤解が解ける。涙を浮かべる女性の手を男性がそっと握る。BGMは、チェット・ベイカーの『My Funny Valentine』。
私がこれから、後ろに♥が付いた台詞を言われることも、こんなシチュエーションに出会うことも無いとは思うが。

次に男性同士が言い争う場面を思い浮かべる。眉間にしわを寄せたコワモテが、悔しそうに「き、き、貴様 ・・・ 」とつぶやく。それが「き、き、貴様 ♥♥♥ 」だと、その意味はやはり全くの別物となる。
今後こんな台詞を言われることも、こんなシチュエーションに出会うことも無いことを願う。

『スイーツ本部長 一ノ瀬櫂 ①』  佐々木善章・著 講談社・刊

精密機器商社として業界3位を誇る㈱外川無線電機。東京本部長に新しく就任したのは一ノ瀬櫂(47才)。40代で本部長就任は社内初。切れ者というのはウワサだけでなく、やることに無駄がなく仕事は早い。反面粘り強さも持ち合わせている彼は、口数少なく威圧感があるクールなメガネ男子。
一ノ瀬は独身だが、仕事が終わると何故か真っすぐ家に帰る。それは誰にも見せられない別の顔があるから・・・。彼は家に帰ると自ら作って味わう「スイーツ男子」であり「スイーツサラリーマン」だったのだ。

ふわふわ「イチゴのショートケーキ」、しぶい!「ほうじ茶ロールケーキ」、パリふわ「シュークリーム」、基本を踏まえたうえで独自の工夫を加える。材料はもちろん、混ぜ方、熱を加えるタイミング、そのこだわりは細部に至る。「カスタードプリン」、「アップル・パイ」は言うに及ばず「モンブラン」、「ミルフィーユ」、「ティラミス」も手作りだ。止まらないスイーツ愛♥

物語は毎回彼の作るスイーツと仕事が上手くリンクしている。スイーツ作りの悩みを解決することが仕事の問題を解決することに繋がり、業績をあげていく。仕事と趣味の絶妙なコンビネーション。また彼はデスクで考えているだけでなく、現場で汗をかくことを厭わない。実はカロリーが気になるお年頃であり、甘いもののためにハードワークをこなしているのだ。ただ美味しくスイーツを食したいための努力が、彼の評価やカリスマ性を益々引き上げていくことになる。

若いサラリーマンにとっては甘い夢物語に思えるかもしれない。だが仕事に関する台詞に奥深い意味があることを、私は見逃してはいない。
甘いスイーツにも苦い隠し味があることを知ってこそ、大人なのだ。

わが社には、書店業界で有名なK本部長が居る。先日も売場についてアドバイスを受けた。いつも厳しく、そして温かい言葉をかけてもらえる。
だから、「お疲れ様です。K本部長」と挨拶する時、頭の中では♥が幾つも付いている。

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