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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2015/02/18 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

みのたけの春

著者:志水辰夫

出版社:集英社

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みのたけの春

『カープのユニフォームを着て投げて最後の1球になった方が、後悔が無いと思い復帰を決断しました。』
カープに黒田博樹選手が帰ってきた。メジャー球団からの高額なオファーを断って広島に。大人で、男前な決断に感動した。熱狂的なファンではなかったが、俄然応援したくなった。

色々考え悩んだ。モヤモヤした気持ちもあったが、最後は「優勝しよう」とオーナーから言われ胸が熱くなったと語られていた。その男気ある決断、堂々とした立ち振る舞い。黒田選手は40歳。年齢は一回りも下だが、随分と年上に感じた。

ただ私は、息子の様な年齢の高校球児でさえも年上に感じてしまうのだ。私には到底出来ないことに挑み、歯を食いしばり、汗まみれになり努力している。そのひたむきな情熱に、生きる姿勢に敬意の念を抱き、年上に感じてしまうのだ。
これは私だけかと思っていたが、タレントの小堺一機さんが『今でも、甲子園を見ると、高校球児がお兄さんに見えますから。』と言われており、同じ感覚を持っている人が居て少しホッとした。

実際の年齢は関係ない。そこには尊敬できる人が居るのだ。圧倒的な存在感を持つ大人の男が居るのだ。

「みのたけの春」 志水辰夫・著 集英社文庫

幕末の北但馬。主人公は二十歳の郷士・榊原清吉。病弱な母の治療のため、父は借金を繰り返していた。だがその借金を残したまま父は亡くなる。清吉は家屋敷を処分して養蚕を家業にすることでなんとか生活を立て直し、病気の母と借財を抱えながらもつつましく暮らしていた。そんなある日、私塾に通う仲間である民三郎が刃傷沙汰を起こす。清吉は友を救うべく立ち上がるが、事態は思わぬ波紋を呼ぶ。
天誅組の乱、蛤御門の変が起きた激動の幕末。若者たちはざわつき、動き出すのは今だと声高に叫ぶ。農兵召募の動きもあり、京に上ることを扇動するものも現れる。多くの若者が時代の波に身を委ねていくなか、清吉は郷里で暮らすことを選ぶ。日常をあくせくと生きていく道を選んだのだ。

時勢に流され深く洞察することもなく、だだ無謀に熱くなってゆく若者とは相反し、郷里で生きることを選んだ清吉。物語としては地味に思えるかもしれない。でも私は清吉の判断に、黒田選手と同じ男気を感じた。それは、本物の大人の男にしか出来ない決断なのだ。

「すぎてみれば、人の一生など、それほど重荷なわけがない。変わりばえのしない日々のなかに、なにもかもがふくまれる。大志ばかりがなんで男子の本懐なものか」

これは負け惜しみではない。高らかに宣言しているのだ。地元に留まり、逃げずに戦っていくことを。

もちろん海外で活躍するのは誰でもが出来ることではない。素晴らしいことだ。だが、それだけが野球選手の本懐ではないのだ。それをこれから黒田選手が証明してくれる。
優勝しよう!

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