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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2015/03/11 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

嘘みたいな本当の話

著者:選者・内田樹+高橋源一郎

出版社:文藝春秋

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嘘みたいな本当の話

妻が白髪を染めている。よくは分からないが、自宅で染めるには結構面倒な作業が必要らしい。下に新聞紙を敷き、汚れないよう肩に大きめのタオルを掛けている。
しばらく見ていると白髪染めをベタッと塗った髪が、なぜかリーゼントに思えてきた。そして、そのリーゼント風の髪型と肩に掛ったタオルは、ちょっと「ぽっちゃり」した頃のある人を連想させた。
プレスリーだ!妻の横顔は、キング・オブ・ロックンロールと呼ばれているエルヴィス・プレスリー、その人に似ているのだ。
 
『嘘みたいな本当の話』 選者・内田樹+高橋源一郎 イラスト・ほしよりこ 文春文庫

かつて、アメリカで『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』というものがあった。アメリカの市井の人々が、自分たちの人生で起こった、風変わりな、もしくは、かけがえのない出来事について書き記したものをラジオに送り、それを、アメリカを代表する作家ポール・オースターが朗読したのである。この、たいへんユニークな企画を真似て行われた日本版をおさめたのが、この本ということになる。
「文庫版のための ちょっとしたまえがき」より

確かにラジオを聴いていると、リスナーからの投稿には風変わりで面白い「嘘みたいな本当の話」がたくさんある。TVで言えば「探偵!ナイトスクープ」だろうか。普通の人々の「普通ではない」体験や悩み、そして特技が、とてつもなく面白い話になる。

ただ一概に面白い話といっても好みがある。「最後の一行で、キュッとツイストがきいた話が好き」な内田樹、「僕は奇妙な味の、オチのない話が好み」という高橋源一郎。
本書に載っているそれぞれの話には、どちらの選者が選んだ作品なのかが分かる印として、◯で囲まれた内、もしくは高の一文字が付いている。よって内と高の両方の文字が付いている話は、2人ともが選んだ秀作と言える。

もちろん、どんな話かは読んでからのお楽しみだ。1,000字限定で募集されたので、どの話も短くて読みやすい。逆に短くしたのが、面白くなった要因だそうだ。中には30字の作品もある。

― 残念ですが「やや冗長な自己紹介」とか「ちょっと気のきいた警句」とか入ったものは採用されませんでした。こうしたショート・ストーリーは「つかみ」と「オチ」がいのちなんですね。一気に最後まで坂道を滑り落ちるように読ませる工夫が必要なんだということが、読んでいてよくわかりました。 ―

コラムを書く上でも、このアドバイスはとても参考になる。ショート・ストーリーの要諦は「いきなり始まって、ぶつんとカット・アウト」、ロックンロールと一緒だそうだ。
これからはロックな文章、ロックなコラムを目指そう。プレスリーになった妻の横顔を見ながら、そう決意した。

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