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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2016/10/17 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

たとえば、すぐりとおれの恋

著者:はらだみずき

出版社:祥伝社

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たとえば、すぐりとおれの恋

私は酒を飲みません。煙草も吸いません。麻雀やパチンコもやりません。人混みは苦手なのであまり家から出ません。よって外食をすることは、滅多にありません。今はオジさんなのでこんな感じでもそれなりに認めてもらえますが、若い頃は『何が楽しみで生きとるんよ、つまらん奴じゃのー』と先輩から言われていました。
 
20代半ばから後半にかけてが、ちょうどバブルの時代でした。世の中は景気がよく、皆浮かれていました。でも私は、どんな風に浮かれたらいいのか分かりませんでした。大勢で集まってお酒を飲んで、大きな声でしゃべってワイワイと騒ぐ楽しさが分かりませんでした。

付き合っていた女子から、「見込み違いだった。」とため息交じりに言われてフラれました。ショックでした。「えっ、何で?訳わからん。」と思いました。そっちから告白してきたのに。
何を見込まれていたのか分かりません。バブルの頃です。お洒落で美味しい店に連れて行ってもらえるとか、高価でセンスがよいプレゼントをさり気なく渡されるとかを期待していたのでしょう。しゃべくりで笑わせて、いい気分にさせて欲しかったのでしょう。
彼女は先輩と同じ目をしていました。

私は他人を楽しませるために存在しているわけではないし、自分のことを分かってくれる人とだけ話をすればいいと思っていました。まるで意固地な頑固爺でした。
 
自分のことを知ってもらうこと、相手のことを知ろうとすることは二つで一組の対です。本心を語らなければ本心を語ってはもらえません。
仕事も遊びも恋愛も、そして家族だって、結局は人と人なのですから。

はらだみずき・著 「たとえば、すぐりとおれの恋」祥伝社・刊 

保育士の向井すぐりと新米営業マンの高萩草介。すぐりは草介のことをもっと知りたいと望むが、草介は自分の過去の恋愛や家族について触れたがらず、なぜかデートの途中に姿を消してしまう。お互いをどこまで知ることが幸せな明日につながるのか・・・。男女の視点から恋の成長を追いかける、新感覚ラブストーリー。

― 読みながらふと思った。かみ合わないのは、けっしてすぐりと草介に限ったことではない。人は誰も皆、全く違う環境で生まれ、育ち、全く違う家族を持ち、生きてきたのだから、かみ合うことの方が奇蹟的なのだ。まったく別々の環境で、まったく違う家族とともに生きてきた人と人が出会い、そして新しい家族をつくる。すぐりの両親も、草介の両親も、そうして家族になっていったに違いない。この作品は恋愛小説という枠に留まらず、すれ違い、ボタンのかけ違いを繰り返しながらも一つの家族へと向かう家族小説でもあった。―
解説・児玉憲宗

先輩も彼女も同じ目をしていました。言葉とは裏腹に、まなざしはとても優しいものでした。もっと自分をさらけ出していいんだ、楽しんでいいんだ、自分の人生を遠慮するなよ、と教えてくれていたのでした。

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