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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
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本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2018/06/16 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
老後の資金がありません
著者:垣谷美雨
出版社:中央公論新社
お風呂でシャンプーをするときに気になるのが、お腹。うつむいて少しでも背中を丸めると、ポコッと出てきては邪魔をするのが、お腹。痩せていても年齢とともに出てくるものだと、しみじみ思う。
娘は、そのポコッとしたお腹を「ベーグル」みたいだと言う。真ん中の凹んでいる所をおへそに見立て、そう呼んでいるとのことだ。ベーグルとはパンの様な食べ物らしいが、どんな物かとネットで調べていたらクックパッドにたどり着いた。プレーンベーグルの写真があり、その横の説明に「大きくてむっちりふわっとしたアメリカンタイプ」とあった。
どうやら私のお腹は、このアメリカンタイプらしい。
ならば、私どころではなく前々から「大きくてむっちりふわっ」としている奥さんのお腹は、一体何なのか。私のプレーンなアメリカンタイプを上回る、濃厚な感じであることは間違いない。「白玉&あんこ抹茶ベーグル」だろうか。はたまた「もっちり食感ゴマチーズベーグル」なのだろうか・・・
彼女はゆっくりと指を三本立てた。えっ、ベーグルが三個?いや違う。世間でよく耳にする、あの三つの段々な状態ではないのか。でも奥さんは、それを何と例えるのだろうか。
彼女は笑顔で、こう答えた。
「三つの天使の輪」
それ以降、私たちの朝は、お互いのお腹を「なでなで」するという独特な挨拶で始まる。プレーンベーグルと天使の輪の存在を確かめ合うのだ。
「なかなかの仕上がり具合ですな~」
「それほどでも、ウフフ・・」
朝からいちゃついている私たちに、息子が「バカップル~」と声をかけては、「行ってきま~す。」と出社して行くのだった。
いい歳をして「バカップル」な私たちは、来年結婚30周年を迎える。バカップルの大ベテランである。 でもそれは、真剣にお互いの老後を考える時期に来ている、ということでもある。
『老後の資金がありません』 垣谷美雨・著 中公文庫
「老後は安泰」のはずだったのに!後藤篤子は悩んでいた。娘の派手婚、舅の葬式、姑の生活費・・・、しっかり蓄えた老後資金はみるみる激減し、夫婦そろっての失職。家族の金難に振り回されつつ、やりくりする篤子の奮闘は報われるのか?
ふりかかる金難もなんのその、生活の不安に勇気とヒントをあたえる家計応援小説。
世の中に他人事は、ない。今、誰かが悩んでいる問題は、いつか自分にも降りかかってくることなのだ。関係ないと思っていると後悔することになる。かと言って、将来のことを心配ばかりしていては気が滅入る。時間ばかりが無駄に過ぎていく。それこそ本末転倒だ。無駄に過ごした時間を後悔することになる。
同じ時間を過ごすなら、本を読んだらどうだろうか。直接の答えは出ていないかも知れないが、「そういえば以前読んだ本の中に、今の自分と似たような境遇の人が居たよな~」、ぐらいでも良いのでは。
頭の片隅に「何かで読んだ」記憶があるだけで、「予防接種を受けていたから案外軽く済んだ」、と思えるかも知れない。
ところで、どなたか「バカップル」につける薬をご存じないですか?まあ、今の私たちには関係ないですけどね。
でも、そう思っていると後悔するのだろうか…