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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2018/09/22 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
考えるマナー
著者:赤瀬川原平/井上荒野他
出版社:中央公論新社
その昔、私がまだ若かった頃の話です。ある店で、店長を補佐していた社員が怪我をしました。しばらくは勤務ができず、他店の社員が、1か月交代でピンチヒッターを務めることになり、私もそのうちの一人に選ばれました。
隣県でしたが、少し無理すれば通えない距離ではありません。でも幸か不幸か、その店の店長は独身で一人暮らし、更にその住まいは店のすぐ隣のマンションでした。なので応援に入る社員は、そのマンションで店長と同居が出来る者に絞られ、独身の若手男性社員が選ばれたという経緯がありました。
同じ会社ですが、店舗ごとに特徴があります。店長の個性が、店頭に色濃く出ています。多くの店で様々なタイプの店長のもとで学ぶことも、若手社員にとってはとても大切です。
「この機会に寝食を共にして仕事の技を盗んで来い!」という意味合いもあるのだと理解しました。
入社して4年とはいえ、私もまだまだぺーぺーです。対してその店長は、仕事は早くて手際がいい、細やかで真面目、さらに自分にも他人にも厳しい。そんな人と1か月とはいえ同居するなんて、とても緊張していました。
でも勤務中は厳しい店長も、マンションに帰り二人だけになると打って変わって優しく接してくれました。「疲れているだろう。」と、やたらとお菓子をすすめてくれます。そして、早く風呂に入るように促されました。
でも、その視線が妙に熱いのは何故…
脱衣場でしばし考えました。先ほどの視線は何を意味するのだろうか?とても気になる。こんな時、お風呂のカギは閉めるべきだろうか?気にしていること自体が失礼なのだろうか?
今からマナー本で調べるわけにはいかない、そもそも書かれてはいないだろう。自分で考えろ、考えろ、考えるんだ!
『考えるマナー』中公文庫
赤瀬川原平/井上荒野/劇団ひとり
佐藤 優/高橋秀実/津村記久子
平松洋子/穂村 弘/町田 康
三浦しをん/楊 逸/鷲田 清一
悪口の言い方から粋な五本指ソックスの履き方まで、大人を悩ますマナーの難題に作家十二人が応える秀逸な名回答集。
マナーに関して個性的で独自の考え方が満載です。「なるほど~」と感心し、「そう、そうなんよ!」と相槌を打つこと間違いありません。
嘘だと思われる方は、何か一つ読んでみて下さい。どれも短いのですぐ読めます。もしかすると、「それほど面白くないなぁ」と思われる場合があるかもしれません。でもそれは、たまたまです。騙されたと思って、試しにもう一つ読んでみて下さい。そして、それを繰り返してください。
それが、本書を読むときのマナーです。