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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2018/12/16 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

大事なことほど小声でささやく

著者:森沢明夫

出版社:幻冬舎

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大事なことほど小声でささやく

「お湯につかって100まで数えてから出ようね。」というのは、幼い娘と一緒にお風呂に入るときの定番だ。ある時、100までのカウントを途中で止めた娘から質問された。「わたしは、大きくなったら誰と結婚するん?」
いい質問だ。「それは、お父さんとだよ。」

二人だけの秘密だと小声でささやいてみた。真剣に答えたのに、「お父さんにはお母さんがいるでしょ。で、わたしは誰と結婚するん?」
そんな話信じられないと、同じ質問をたたみかけてくる娘。普段ぼんやりしているのに、なぜかこんな時だけハッキリした答えを求めてくる。やはり幼くても女子だ。息子とは違い、どうも扱いにくい。「年長さんだろ、少しは空気読めよ。」、幼稚園児にイラッとする私。

台湾から帰った日、お風呂の中でそんな事を思い出していた。あの頃は、娘がこんな遠くに嫁ぐなんて思いもしなかった。
「でも、いい結婚式だったな~」と感慨に浸りながらも、ふと気になった。嫁いだ娘に、「年に一度は台湾に行くから、年に一度は日本に帰っておいでね。」と言ってはみたものの、実際あとどのくらい娘と会って話ができるのだろうか?
 
お互い行き来して年に2回会うとすれば、単純に平均寿命から私の今の年齢を引いて2倍にしてみれば良いのでは、と考えネットで調べてみた。日本人男性の平均寿命は81歳だった。計算すると、私の人生は残り25年だった。
これから娘に会える回数よりも、この25年に正直驚いた。社会人になって33年、結婚して29年、娘が生れて27年が過ぎている。それよりも短い25年だなんて…

もちろん平均なので個人差はある。残りわずかではないが、それほど長くもないことだけは明らかだ。ならば、もう娘のことを考えている場合ではない。彼は優しくていいやつだ。任せておけば心配はいらない。幸せにしてくれるはずだ。
だから私は、自分のことを考えよう。幸せを感じられものを見つけよう。好きなものを楽しもう。面白いと思うことは、人に話してみよう。でも自分の嗜好を押し付けることのない様に、小声で。

書名とカバーイラストを見て、「なんか、いいな~」と思い手に取りました。穏やかな見た目とは裏腹な下ネタも満載でしたが、それもいい味出していました。当たりでした。

「大事なことほど小声でささやく」 森沢明夫・著 幻冬舎文庫
身長2メートル超のマッチョなオカマ・ゴンママ。昼はジムで体を鍛え、夜はジム仲間が通うスナックを営む。名物は悩みに合わせた特別なカクテル。励ましの言葉を添えることも忘れない。いつもは明るいゴンママだが、突如独りで生きる不安に襲われる。その時、ゴンママを救ったのは、過去に人を励ました際の自分の言葉だった。笑って泣ける人情小説。

しまった!自分のことばかりで奥さんのことを忘れていた。彼女も幸せにしなければならなかった。とりあえず、溜まっていた洗い物だけはしといたからね…
お昼寝中の奥さんに、小声でささやく。

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