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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2019/02/27 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
フィクション
夢も見ずに眠った。
著者:絲山秋子
出版社:河出書房新社
会話は言葉のキャッチボールだ。なのに、うちの奥さんときたら何の前触れもなく勝手にドッジボールに切り替え、私に向かってキツイ球を投げつけてくる。
『あなたは自分で思っているほど「いい人」じゃないからね!』、直球で痛いところを突いてくる。
『ちょ待てよ!』とキムタクのように返せば良かった。私は機転が利く方ではない。黙って考え込んでしまうタイプだ。そして後になってから、『何だ、あの言い方は、ムカつく!』となる。
だいたい、そういう奥さんはどうなのだ。休みの日に見ようと楽しみに録っておいた「ホンマでっか⁉TV」も「秘密のケンミンSHOW」も許可なく消している。パソコンでさえ、うっかり消すことがない様に『保存しますか?』とお伺いを立ててくれるのに、優しくない。『あら、まだ見てなかったの』、一言で終わりだ。
結婚前はあんなに優しかったのに。「痩せていて、メガネをかけていて、優柔不断なところも好き」と言ってくれていたのに。
『う~ん、あなたは色々と気を使う方なのかな?』と医師から言われた。胃カメラの画像を見ながらだ。見る人が見たら分かるらしい。神経質というより、小心者だということが・・・
そんな時に奥さんは、『あなたは自分で思っているほど「いい人」じゃないからね!』と言う。私を非難しているわけではない。逆に励ましているのだ。「いい人」に思われようと、中途半端に気を使わなくてもいいよ、という意味だ。
確かに、うちの奥さんは「いい人」と思われようとしていない。そこが彼女の最大の魅力なのだ。
『夢も見ずに眠った。』 絲山秋子・著 河出書房新社・刊
― 自分のためにしか動けないのだ。まったく、それでいい。ひとの身になって考える、ということが苦手なのだ。そしてそんなことをしたら、いつも間違いのもとだから、自分のために生きた方がいいのだ。―
夫の高之を熊谷に残し、札幌へ単身赴任を決めた沙和子。しかし、久々に一緒に過ごそうと落ち合った大津で、再会した夫は鬱の兆候を示していた。高之を心配し治療に専念するよう諭す沙和子だったが、別れて暮らすふたりは次第にすれ違っていき・・・。
ともに歩いた岡山や琵琶湖、お台場や佃島の風景と、かつて高之が訪れた行田や盛岡、遠野の肌合い。そして物語は函館、青梅、横浜、奥出雲へ ― 土地の「物語」に導かれたふたりの人生を描く傑作長編。
『夢も見ずに眠った。』(河出書房新社)刊行記念
絲山秋子さんトークイベント
日付・期間: 2019年3月3日(日)14時~15時半(開場13時半)
場 所: 啓文社岡山本店内特設会場(コミック売場前)
内 容: 定員:30~50名様
入場料:無料
【イベント内容】絲山秋子さんの最新小説『夢も見ずに眠った。』が河出書房新社より発売されました。
一組の夫婦の半生を、ふたりが旅した土地の風景や肌合いに乗せて描いた本作、実は私たちの住む岡山が重要な舞台として登場します!
そこで、絲山さんご本人をお招きして、本作に込めた思いや土地の魅力を描くこと、そして岡山をはじめ日本全国に取材で訪れた際のこぼれ話までをたっぷりお話しいただきます。ぜひこの機会にお楽しみください。