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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2019/03/25 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

愛と勇気を、分けてくれないか

著者:清水浩司

出版社:小学館

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愛と勇気を、分けてくれないか

同じ広島でも県西部である安芸の国の広島弁と、県東部の備後弁は違います。
例えば他県の人から、お好み焼きを広島風と言われようものなら「はぁ?わかっとらんの~」とカチンときますよね。ひとまとめに広島弁と片付けられては、備後の国の人は面白くありません。私たちが使っているのは広島弁ではなく、あくまでも備後弁です。

恋とか愛とかの気持ちを表現する時、安芸の国では「ぶち好きじゃ―」と叫びます。まるで広島カープを応援するかのように、情熱的でストレートに伝えます。一方で備後の国では、「なんかな・・、なんか好きなんじゃ」と照れながら穏やかな口調で伝えます。その方が誠実な感じで女子ウケもいいようです。個人の経験からくる感想ですが。

そうした安芸と備後の違いはあっても、私たちは方言で気持ちを伝え、方言で恋をしてきました。恋愛小説を読んでも何か物足りなさ、胸にグッと迫るものを感じられなくなったのは、年齢のせいばかりでもなかったようです。当時のときめきや痛み、熱い想いも無力感も、まるごと自分たちの言葉で語って欲しかったのです。
こんな小説を待っていました。

『愛と勇気を、分けてくれないか』 清水浩司・著  小学館

80年代後半、広島市民球場が、デビューしたばかりのユニコーンが、確かに息づいていたあの日。ひとりの転校生が、美少女に心を射抜かれた瞬間、それは始まった。
賑やかで、残酷で、なす術もなく、熱病に浮かされたようになりながら、それでも全力で立ち向かうしかなかったあの日々が。

第9回広島本大賞【小説部門】を受賞された本作には、あの頃の私たちが登場します。1988年に高校生だった彼らは10歳ほど年下ではありますが、あの時代を経験してきた仲間です。あの時の「路地裏の少年」が綴った私たちの青春の記憶です。
読み進めていくと、あの頃の夢と希望、あの頃に「おきざりにした悲しみ」までも思い出すことが出来ます。そんな痛くて苦い思い出があるからこそ、「私たちは、まだ終わっていない」と前を向いて進めるのではないでしょうか。

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