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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


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2019/03/30 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


ノンフィクション

大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた

著者:井上章一

出版社:幻冬舎

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大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた

「あ~私の恋は~」と聖子ちゃんが歌っていた頃、大阪で下宿暮らしの大学生だった私は、長期休みも地元の福山には帰省せず、部活とアルバイトに明け暮れていた。
梅田の交通量調査や大阪国際女子マラソンの警備員など、1日だけのバイトは大学の掲示板から探したものだが、お中元とお歳暮の季節だけは百貨店の配送センターと決まっていた。そこは夏と春の合宿費用を稼ぐために、部の先輩たちから代々引き継いでいるバイトだ。
百貨店にとっての繁忙期なので残業もあった。夜食も配られ、下宿暮らしの学生にはとてもありがたかった。それに1か月間頑張って丸々働けば、当時の大卒初任給よりも少し多いくらい稼げたように記憶している。

バイト先には女子大生もいる。運よく仲良くなれることもあった。夢にまで見た都会での自由な学生生活と浮かれていたが、実は困ってもいた。
ケータイもスマホもない時代、よほど裕福な学生でもない限り個人で電話は持っていない。なので大家のおばちゃんが、夜な夜な「女の子から電話やで~」と大声で私の名を呼ぶことになる。毎夜電話してくる浪速っ子の彼女は気さくで明るく元気なのだが、押しが強い女子だった。将来はヒョウ柄の似合う大阪のおもろいおばはんになる可能性が大だった。
聞けば彼女は一人娘、私は次男坊。まだ学生とはいえ、もう未成年ではない。グイグイくる彼女に「このままじゃ福山に帰れんなるかも・・・」と一抹の不安を感じ、申し訳ないが居留守を使いバイトも変えた。

卒業後は無事?地元に戻り就職。職場で知り合った妻とは平成元年に結婚した。彼女は気さくで明るく元気だが、またしても押しが強い女子だった。結局のところ私は、このタイプの女子から逃れられない運命だったのだ。
妻はヒョウ柄こそ着てはいないが、今やその言動は大阪的「おもろいおばはん」と化している。ツッコミにも年季が感じられる。そして私は平成の30年をかけて、わが「妻のトリセツ」を実地で学んできた。元号が変わっても、良い相方でいられるはずだ。たぶん・・・

『大阪的「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた』 
井上章一・著 幻冬舎新書

大阪には、個人的な後ろめたさから複雑な思いが入り混じっている。その大阪も複雑な事情から、世間でよく言われている大阪的な大阪になったと本書で知った。
大阪を愛おしく感じた。

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