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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2019/05/12 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

ポートレイト・イン・ジャズ

著者:和田誠 村上春樹

出版社:新潮社

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ポートレイト・イン・ジャズ

息子は、わが家のSA課の責任者だ。パソコンやスマホに関することは、いつも彼に相談をする。私たち夫婦が使っているiPhoneは、息子に付き合ってもらい、彼の説明を受けながら選んだものだ。
なので息子は、『アメト――ク!』における「かじがや卓哉」のような存在で、私たちは「iPhoneついていけない芸人」と同列の、いわば「ひな壇」両親だ。

それにしても、いつの間に「子どもを買い物に連れて行く」から、「子どもに連れて行ってもらう」に変わってしまったのか。
これが時の流れというものか。唖然とする。

先日、ベビーカーに乗った幼子が私を指さし、「パパ!パパ!」と嬉しそうに声を上げることがあった。若いお母さんは小声で、「パパじゃないわよ~」と笑いながら少しだけ会釈して通り過ぎて行った。その若いお母さんは内心、「あの人はパパというより、ジイジだよね~」と思いながら、笑っていたのに違いない。
だから私も心の中で、「ですよね~」と笑い返した。

まぁ、嫁にいった娘がいるぐらいだから、私もジイジと呼ばれてもおかしくない年齢ではある。私が働き始めたのは昭和だが、当時は55歳で定年だった。もし今もそうだったら、私は既に退職しているはずだ。
そう考えると、ちょっとした年寄りだと自覚せざるを得ない。

でも自分で勝手に思うのはよいが、他人には言われたくない。それに同じジイジになるのなら、知的で渋いジイジになりたいものだ。

例えばこんな感じだ。

豆を挽いて好みの味にブレンドしたコーヒーを傍らに置き、ジャズを聴きながら村上春樹を読む。晴れた日に足が向かうのは、美術館か博物館。雨の日は、独り静かに写経にいそしむ。気が向いた時には蕎麦を打つ。
たまに愛車のボルボで旅行にでかけることもある。今の季節、京都もいいが金沢はどうだろうかと思いを巡らす。ライカの一眼レフを忘れてはいけない。素敵なモデルが助手席に居るのだから、年齢を重ねるごとに美しくなる妻が。

てなことは、『サライ』とか『日経おとなのOFF』の記事で紹介されている人の話だ。年齢を重ねた私の妻では・・・
いや考えるのはよそう。お互い様だ。

『ポートレイト・イン・ジャズ』
 和田誠 村上春樹  新潮文庫

和田誠が描くミュージシャンの肖像に、村上春樹がエッセイを添えたジャズ名鑑。ともに十代でジャズに出会い、数多くの名演奏を聴きこんできた二人が選びに選んだのは、マニアを唸らせ、入門者を暖かく迎えるよりすぐりのラインアップ。著者(村上)が所蔵するLPジャケットの貴重な写真も満載!
単行本二冊を収録し、あらたにボーナス・トラック三篇を加えた増補決定版。

村上春樹は、自身のことを「僕」という。『ナット・キング・コールといえば、僕が最初に聴いた彼の歌は・・・』とか、『おかげで僕らはスイングの円熟から・・』といった具合だ。「私」ではなく「僕」と綴るだけで、印象が随分と変わってくるものだ。
俗な言い方で申し訳ないが、カッコいいのだ。試しにこのコラムの「私」を「僕」に直して読み返してみてもわかる(いつもより「私」を20%増量しておきました)。

それだけで若くなった気がする。まだ老け込む歳ではない。自分で自分を年寄り扱いするのは、もうやめよう。
「そんなことないですよ~」と否定して欲しいだけなのだから。

でもカッコいいジイジになる準備だけは続けよう。
僕は、そう思っています。

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