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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2019/07/27 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
フィクション
雑草のくらしーあき地の五年間ー
著者:甲斐信枝
出版社:福音館書店
私が小学生だった頃、畑仕事から帰った母親が、おもむろにカブトムシやクワガタ、羽化したての真っ白なセミを、「こんなんおったよ。」と言いながら渡してくれることがあった。
それは男の子にとって狂喜乱舞するほど嬉しいサプライズだ。セミはしばらく観察して逃がしたが、カブトムシやクワガタは虫かごに入れて飼った。
カブトムシとクワガタが揃えば誰もがするように両者を戦わせてみたり、夜寝る前は蚊帳(かや)の中に放して遊んだ。ランドセルに潜ませ、学校に連れても行った。休み時間になると仲の良い友達にだけ、「内緒だよ。」と言って見せた。
そのうち母親には頼らず自分で捕りに行くようになり、カブトムシの幼虫やさなぎが大量にいる秘密の場所を見つけた。これは大発見だ。そんな場所を知っているだけで、仲間うちで一目置かれるからだ。
自慢するといっても、私と同じく大人しい性格の子が集まったグループ内でのことだ。でもジャイアンのような同級生の耳にも入り、「どこにあるか教えろや!」と迫られた私は、のび太のような反応しか出来ず、つい白状した。
結果クラスの男子が大挙して押しかけて来て、とんでもないことになった。多数の男子に踏み荒らされ、掘り起こされたその場所は、本家のおじさんがシイタケを栽培していた。
その後、親からは怒られたが、いたずらを一緒にした仲間意識が生まれ、ジャイアン君とも少しだけ仲良くなれた。積み上げられた稲わらの中をくり抜き秘密基地を作って遊んだ。
「雑草のくらし―あき地の五年間―」
甲斐信枝・著 福音館書店
― 草たちは、早く大きく、強くなろうといっしょうけんめい。せまい場所で、かたまりあって生まれたメヒシバは、少しでもたくさん日にあたろうと、上へ上へとのびていく。なかまのいないところに芽を出したメヒシバは、体いっぱいに日の光をあび、茎をのばし、葉をひろげ、もっと地面に広がろうとする。 ―
「雑草のくらし」を読みながら、小学生の頃を思い出していた。クラスの中には色んな子がいた。体が大きくて腕力がある子、走るのは遅くてすぐ泣くけど勉強ができる子、運動も勉強も苦手だけど漫画を描くのが上手い子。
目立っている子も大人しい子も、どの子も何かが苦手で何かが得意だった。そして、お互いがそれを知っていた。
「みんなちがって、みんないい。」(わたしと小鳥とすずと・金子みすゞ)
同級生とワクワクしながら昆虫を取り、あき地や田んぼで作った秘密基地で遊びながら、人として大切なことを学んだ。