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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2019/09/01 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
ボッコちゃん
著者:星新一
出版社:新潮社
兄の部屋は私の図書室だった。2学年上の兄は、私が小学校高学年の時に中学生、私が中学生になると高校生。一足先に思春期に入り、二歩先に大人に近づいている兄の本をこっそり読み、そんな大差はないにせよ、少しだけ上の年代の世界を垣間見ている気分がしていた。
ちょっと背伸びをしたい年頃にとって、兄の存在はありがたかった。
でもそれは、今にして思えば、であり、当時はウザいだけの存在だったが・・・
時代は1970年代、個人的な記憶によるが、ミステリーよりもSFが読まれていたように思う。小松左京、筒井康隆、眉村卓、光瀬龍・・・、NHKでも「タイム・トラベラー」(原作・時をかける少女)、「夕ばえ作戦」、「なぞの転校生」、「まぼろしのペンフレンド」、「七瀬ふたたび」など、SFを原作にしたドラマがシリーズで放送されており、ワクワクしながら見ていた。
「日本沈没」が大ベストセラーとなり映画、テレビドラマだけでなく、ラジオドラマにもなっていた。私にとっては、ラジオドラマの方が想像力を掻き立てられ、本を読んでいる感覚に近かったことを覚えている。
その頃、兄の本棚には、これまた大ベストセラーの「ノストラダムスの大予言」もあったが、一番揃っていたのが新潮文庫の星新一だった。気難しい長男気質の部屋の主が居ない時に、こっそりと入っては読んでいた。
持ち出すことも出来たが、本が無くなっていることに気づいて騒がれたくなかったからだ。
その点、星新一のショートショートは都合がよかった。短くて面白い。SFで科学っぽい話なのに落語みたいだ。
もう少し読んでいても大丈夫、まだ帰ってこないはずだ。あと一話、もう一話・・・
ドンドンドンと階段を駆け上がる音がする。しまった!時間を忘れて夢中で読んでいた。逃げなくてはいけない。でも自分の部屋に戻る余裕はない。隠れるか?
いや、窓から出て屋根伝いにベランダに移ることができるはずだ!
慌てて窓に手を掛けた。その刹那、ドアが開く。
「なんしょん?おう、買ってきたで、星新一の新刊。お前も好きじゃろー」
「ボッコちゃん」 星新一 新潮文庫
スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
いま啓文社各店では、児童書を卒業したティーンズ向けの作品を集め、「10代からの本棚」と銘打ったコーナーを展開しています。小説だけでなく、歴史、哲学、経済、政治、社会科学と様々なジャンルを取り揃えています。
ちょっと背伸びがしたい!そんな中高生のあなたに、ピッタリの本が必ず見つかります。どの本にしようか迷ったときは、お気軽にスタッフにお問い合わせください。恥ずかしがらなくてもいいですよ。
もちろん、逃げ出さなくても・・・