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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2019/10/19 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
ノンフィクション
思わず考えちゃう
著者:ヨシタケシンスケ
出版社:新潮社
仕事あるいはプライベートでも、用事が重なり忙しい時に、「分身の術を使って、もう1人自分を出せたらいいのになぁ」、と考えることがある。
でも、私がもう1人増えるだけだ。所詮は同じ性格、優柔不断な私が2人で向かい合って座り、「どーしょーかねー」、「わからんねー」とお互い決断できずに悩んでいる姿が思い浮かぶ。この2人だと、いつまでたっても埒(らち)があかないことは容易に想像がつく。
ならば段取り良く、ちゃっちゃと物事を進めていける私の奥さんをもう1人増やして、彼女に手伝ってもらえばいいのでは、と考える。
だが1人だけでも難儀なのに、あの奥さんが倍増するのだ。例えば2人になった奥さんが同時にしゃべりだして、「はい、次はこれ!」とか「はよーしんさいよ!」とか、矢継ぎ早にダブルで指令を出されたらと想像すると、ちょっとした恐怖を覚える。
それに奥さんはよく食べるので、食費も倍増するはずだ。だめだ、とてもあの奥さん2人を養えない。
私の悪い癖だ。怖いのに一旦想像し始めたらもう止まらない。さらに色んなパターンを考えてしまう。
私1人対奥さん2人の場合はとうてい太刀打ちできないが、私2人対奥さん1人なら、ギリなんとかなるかも知れない。ちょっと明るい兆しが見えてくる。もちろん2対2のパターンもあるが、1対1の2組に分かれるパターンだってある。
そんな時、1組は仕事に家事にと普通に暮らして、もう1組は旅行に行って楽しい時間を過ごすというのはどうだ。そして一晩眠ると両方の記憶が合わさって、充実感も2倍になるのだ。
すぐに、それは夢物語だと気づく。たぶん旅行に行く2人は、どちらも奥さんになるはずだ。
そして1人の私が仕事に行き、もう1人の私が家事をすることになるのだろう。想像しているだけなのに、あまりにも哀しい結末。
どんだけネガティブなんだ、私は・・・
それでも考えるのを止められない。
私には分かる、ヨシタケさんの気持ちが。
『思わず考えちゃう』 ヨシタケシンスケ 新潮社
大人も子どもも、それ以外も、「考えすぎちゃう」すべての人へ――。「自由って何?」「子どもに優しくできないよ」「あれは人生の無駄?」「他人のストローの袋が気になる」「明日、すごいやる気を出す方法」等々。絵本作家ヨシタケシンスケの、読むとクスッとしてホッとしてちょっとイラッとする、スケッチ解説エッセイ! 新感覚。楽しくて、グッとくるイラスト、100点以上、収録!