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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2020/01/10 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

疾れ、新蔵

著者:志水辰夫

出版社:徳間書店

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疾れ、新蔵

2020年は4年に一度のオリンピックが開催される年、オリンピックイヤー。だが私にとっての4年に一度はギックリ腰だ。コラムを遡ってみると、確かに前回ギックリ腰になったのは2016年ブラジルのリオオリンピックの年だった。

今回は2019年の年末、12月25日だった。なので正確には4年間隔ではない。ちょっとした誤差がある。でも腰痛とともに年を越し2020年のオリンピックイヤーを迎えたのは事実だ。ハッピーではない「腰痛」ニューイヤーだったのだ。
ただ不幸中の幸いで、前回ほど酷くはない。痛いながらも歩くことはできた。それでも大事をとって、当日は奥さんに勤務先まで迎えに来てもらった。

現在勤めている店は、同じフロアのお隣がGUでお向かいが無印良品だ。その為か、連絡すると奥さんは嬉々として迎えに来てくれた。
「すみません。主人がご迷惑をおかけして・・・」と、店長Mに神妙な面持ちで挨拶した妻。私には「大丈夫?」と言いながらも「帰るのは少々遅くなってもいいからね。」と笑顔で告げ、臨戦態勢で歳末セール中の売場に向かって走り出した。

さすがに師走だ。私の「師」である姉さん女房殿も走るのだ。その姿を見ながら考えた。何か良くないことが起こった時、今の私は走って逃げることが出来ない。時と場合によっては、とても不利で危険な状態だ。
これでは自分どころか大切な人を守ることはできない。さあ、どうする。
逃走の場面が圧巻。読み応えのある時代小説を3冊。
大切な人を守るため、命がけで逃げた男たちの物語。主人公たちは、わけあって逃げてはいるが、人生にしっかりと向き合っている。土俵際まで追い込まれての逆転劇は爽快だ。

『疾れ、新蔵』 志水辰夫 徳間文庫
越後岩船藩の江戸中屋敷に新蔵は疾(はし)る。十歳の志保姫を国許に連れ戻すために。街道筋には見張りがいる。巡礼の親子に扮し、旅が始まった。逃走劇の根底には江戸表と国許の確執があった。間道を選んで進む道中に追っ手は翻弄される。ところが新たな追っ手が行手を阻み、山火事が迫る中、強敵との死闘が待つ。冒険小説の旗手シミタツならではの痛快時代エンタメ長編。

『銀漢の賦』 葉室麟 文春文庫
寛政期、西国の小藩である月ヶ瀬藩の郡方・日下部源五と、名家老と謳われ、幕閣にまで名声が届いている松浦将監。幼なじみで、同じ剣術道場に通っていた二人は、ある出来事を境に、進む道が分かれ、絶縁状態となっていた。二人の路が再び交差する時、運命が激しく動き出す。第十四回松本清張賞受賞作。
『男振』 池波正太郎 新潮文庫
若くして頭髪が抜け落ちる奇病を主君の嗣子・千代之助に侮蔑された17歳の源太郎は、乱暴をはたらき監禁される。別人の小太郎を名のって生きることを許されるが、実は主君の血筋をひいていたことから、お家騒動にまきこまれることになる。しかし、源太郎は、宿命的なコンプレックスを強力なエネルギーに変えて、市井の人として生きる道を拓いていく。清々しく爽やかな男の生涯。

奥さんは家の中でバタバタと用事をしている。まだ腰が痛くてゆっくり歩いている私を、「ちょっとどけて!」と押しのける。Sっ気のある奥さんは、痛がる私を見てクスッと笑う。
今、奥さんと相撲を取っても負けるだろう。腰痛には「ヤンキー座り」が効果的らしいので試しているところだ。今に見ていろ!と思う。
そう考えている私の男振りは、とても小振りだ。

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