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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2020/02/11 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

ぼくはなきました

著者:くすのきしげのり・文 石井聖岳・絵

出版社:東洋館出版社

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ぼくはなきました

娘夫婦が台湾に帰って行った。嵐のような日々が去り、元の日常が戻ってきた。
もちろん一番大変だったのは妻だ。私は仕事が休みの日に、ちょっと相手をしただけに過ぎない。瀬戸大橋を渡って四国にうどんを食べに行ったが、まさに「おいしいところ」だけ付き合ったのだ。
この2週間、毎日若夫婦に気を使い、振り回されてきた妻はホッとしているはずだ。
いやはや、お疲れ様でした。

でも実は私、早くも「今度はいつ来てくれるのだろうか?」と、そればかり気にしている。2人がいると家の中が賑やかで明るくなる。いなくなって寂しい…ということもあるが、その間、娘夫婦に集中していた妻の視線が、また私に戻ってきたからだ。

アラサーの夫婦と言っても、娘たちはまだ学生カップルのような危なっかしさもある。妻は、親心から娘夫婦に随分と耳の痛いことを言っていたが、その矛先が私に向かってきた。
娘に意見するのと同じテンションで私の生活態度に苦言を呈し、食事中の所作や後片付けのうっかり忘れに対し、鋭い教育的指導を再開したのだ。

姉さん女房の妻は人生の先輩であり、いろんな意味で私の先生だ。先輩や先生にも色んなタイプの人がいるのは承知しているが、この単語からくる私のイメージは、「厳しい」、「怖い」だ。
私が単に臆病で「恐れ」だということもあるが、大人しい性格の後輩や生徒が相手だと、上から目線でことさら厳しく接する人がいたからだ。
私はアラ還になった今でも、このタイプの人は大の苦手だ。

中学生になると同時に眼鏡をかけた私は、小学校の低学年の頃から視力が悪かった。母親は心配していたが、まだ低学年だった私は、自分ではそれほど気にしていなかった。
小学校2年生の新学期、健康診断のことだ。視力検査に並んでいた私の順番が来た。すでに検査を終えた同級生は皆問題なく見えていたようだが、私は、その時に検査を担当していた若い女性の先生が、どこを指しているのかさえ見えなかった。

「えっ!これが見えないの?」
イラッとした口調のつぶやきが聞こえた。同級生がザワついた。

私は泣いた。その後の記憶は、ない。

「ぼくはなきました」 
くすのきしげのり・文 石井聖岳・絵 東洋館出版社

さんかんびに じぶんの いいところを はっぴょうすることなった ぼく。
いくらかんがえても、おもいだすのは ともだちの いいところばかり。
やっぱり ぼくには いいところなんてないんだ。
なきそうになった ぼくに、せんせいが おしえてくれたのは、じぶんでは わからなかった
ぼくの とっても すてきな いいところ!

「作文じょうずだね。」
小学2年生の時に担任だったF先生はベテランの男性で、とても優しかった。こんな私のいいところを見つけて褒めてくれた。
クラスの代表として文集に載せてくれた。

なにかひとつに自信があれば、それだけで生きていける。

F先生の言葉が、アラ還になった今でも、私を支えてくれている。

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