おすすめの本RECOMMEND
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2020/03/22 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
ノンフィクション
亀のひみつ
著者:田中美穂
出版社:WAVE出版
もう1か月も過ぎてしまいましたが、2月22日は「猫の日」でした。わが家に猫はいません。亀ならいます。ロシアリグガメのトンちゃんです。
例によって当コラムを遡ってみたところ、2012年11月12日、益田ミリ・著「オレの宇宙はまだまだ遠い」を紹介している中に、トンちゃんの名前が登場しています。少なくても8年ぐらい前から、わが家の一員でした。
「猫の日」のように「亀の日」というのがあるか調べてみました。5月23日が「世界亀の日」でした。少し先ですが、その頃にはきっと…
いま世界中が、新型ウイルスの感染拡大で大変です。人々の行動が制限されています。個人的なことで言えば、台湾に住む娘は、いま日本に帰れません。もちろん会いにも行けません。急用があるわけではないのですが、それでも「いま、もしも何か起きたら」と一人勝手に想像しては、不安を感じています。
「世界亀の日」の頃には、全世界が平安な日日に戻っていて欲しいものです。
でも、なぜ急に「亀の日」を調べ、亀について考え、亀の本を無性に読みたくなったのでしょう?
答えは簡単。暖かくなり、トンちゃんが動き始め、目の前を横切っていったからです。
これまた例によって、部屋の中に放しては何事かの用事をするのが妻です。陸ガメですが、しばらく沐浴をさせ、タオルでよく拭いてあげて「ほれ、散歩しとき!」と放牧ならぬ放亀をします。
もちろん歩みはゆっくりですが、時にダッシュします。思ったより素早く動きます。
「亀でも急ぎ足になることはあるじゃろー、それぐらいじゃ驚かんなぁ~」と言われるかも。
ならば、これはどうですか。亀は人になつきます。妻を見かけるとズンズン近寄っていきます。餌をくれるからでしょうが、私や息子への態度とは違います。ある程度は人を識別しているようです。
これもよくある光景ですが、フローリングにうっかり置いてしまった買い物袋から、盗み食いすることもあります。妻からLINEが届き何事かと見ると、トンちゃんが大根に噛り付いている動画だったりします。食事をする姿は、結構野性味があります。
でも偉そうなことは言えません。お世話しているのは妻です。私は、放亀されている時に見かけるだけです。詳しいわけではありません。
犬や猫、小鳥などと比べると愛らしいと感じる見た目ではありません。ふわふわの毛を撫でて可愛がることもできません。甘えた鳴き声も出しません。芸は何もできません。すぐ首を引っ込めます。
またまた、いつもの例えで恐縮ですが、まるで引っ込み思案な自分を見ているようです。
見た目も行動も不器用で面白味がないと言われる人もいるでしょう。でも、そんなとこが「かわいい」と感じる人もいます。何となくですが、亀をずっと見ていることができる人は、一人静かに本を読むのが好きな人かも知れません。
私は亀の魅力を上手く説明できません。興味を持たれた方は、まず本書を読まれたらいかがでしょうか。
WAVE出版「亀のひみつ」田中美穂・著、矢部隆・監修
えさを食べるのが下手、冬眠する、長生き、太りすぎ注意(甲羅に入れなくなることもあるのです)、意外と人になつく、猫を追いかける!?
クサガメのサヨちゃんの不思議でかわいい行動を中心に、知られざる生態、種類、飼い方を紹介。
著者は、岡山県倉敷市の古書店「蟲文庫」の店主である田中美穂さんです。田中さんは、あとがきにこう書かれています。
生き物である私たち人間も、生まれてきたからには、なんとかかんとか工夫しながら、死ぬまで生きていかねばなりません。
大変だなあと思うことも少なくありませんが、でも、万事ぼちぼち、そこそこに順応というこの亀のいい加減さ、ほんとは人にももっとあっていいのではないかと思います。
まあ、われわれもひとつのんびりといきましょう。
「お互い頑張りましょう」ではなく、「お互いのんびりいきましょう」という励まし方があってもいいのでは、と思う今日この頃です。