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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2020/06/26 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


コミック

銀の匙 Silver Spoon

著者:荒川弘

出版社:小学館

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銀の匙 Silver Spoon

「ドラえもん」のコミックを棚に並べながら思い出した。もう20年以上も前になるが、幼い息子を膝にのせてTVを見ていた時のこと。ドラえもんとのび太が恐竜に追いかけられるシーンで、「にげて~!」と足をバタバタさせて泣きながら応援していた息子。
むちゃ可愛くて、思わずギュッと抱きしめたのだ。

そのころ息子は、NHKEテレで放送されていた「つくってあそぼ」という子ども向け工作番組が大好きだった。妻に手伝ってもらいながら、ワクワクさんをまねしては紙コップ、ストロー、色画用紙などで、いつも楽しそうに何か作っていた。

マイはさみ、マイセロテープを持っていた息子は、舌足らずで「さ行」がうまく発音できず、セロテープのことを「しぇろてーぷ」と言っていた。それでも「しぇ」と言えるのはまだ調子のよい時で、ほとんど「え」にしか聞こえなかった。

そう、セロテープの「セ」が「エ」になっているのだ。私たち夫婦は顔を見合わせ赤面した。

「エロテープ、エロテープ、ぼくのエロテープ!」
かわいい声で歌うように「エロテープ」と繰り返してはニコニコとご機嫌な息子。もちろん私たちは、それをすぐに正そう…とはしなかった。こんな無邪気な姿が見られるのは、ほんの少しの間だけだと知っているからだ。なにしろ笑えるではないか。矯正したらもったいない。

しばらくの間、わが家では「エロテープ」が流行った。わが家の中だけのブーム、マイ「ハウス」ブームだ。
そんなある日、「ぼくのエロテープどこ?」と息子が聞いてきたので、「しらんよ。」と答えたら、「じゃ、おとうちゃんのエロテープだして!」と言われて焦った。

そ、そ、それってお外で言ったらいけんよ。家の中だけだよ…

私はコミック担当なので、いまの流行を知っておかねばと「SPY×FAMILY」、「新しい上司はど天然」を買って読んでみた。どちらも面白かったので、これは家族でシェアしなければと息子に貸したら、代わりのマンガを部屋からドンと持って来てくれた。

「銀の匙 Silver Spoon」 荒川 弘 少年サンデーコミックス

大自然に囲まれた大蝦夷農業高校(通称・エゾノー)に入学した八軒勇吾。授業が始まるなり子牛を追いかけて迷子、実習ではニワトリの卵が肛門から生まれると知って驚愕…などなど、都会育ちには想定外の事態が多すぎて戸惑いの青春真っ最中。仲間や家畜たちに支えられたりコケにされたりしながらも日々奮闘する、酪農青春グラフィティ!!

女子目当てで入部した馬術部、工業高校との交流体育祭、寮を抜け出して夏の思い出作りなど、恋あり笑いありの高校生活を面白おかしく描いている、だけではなかった。酪農家の厳しい現実もきっちりと描いてあった。
なにより彼らは殺して食べるために動物を育てているのだ。子豚が可愛くて、つい名前をつけてしまった八軒に、「あいつもいずれハムやベーコンになる。その時が来たら、おまえは食えるか?」と先輩は問う。命をいただく。そのことに悩み、考え、自分の答えを出そうともがき、苦しむ。

全15巻を通勤電車内で順次読んでいったが、読了までの3日間は「もう着いた⁉」と乗車時間があっという間に感じるほどにハマってしまった。
多くの賞を受賞されアニメや映画になっているので、本作をご存じの方は「こんな有名なのに、書店員が何をいまさら」と思われるかもしれない。でも未読でよかったと感じた。
自分で買ったのではなく息子から借りて読んだので偉そうなことは言えないが、大人買いもしやすい巻数なので未読の大人の方は是非。

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