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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2020/08/22 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
私の箱子
著者:一青妙
出版社:筑摩書房
娘が高校生だったある日のこと、突然「私は森ガールになる!」と宣言した。森ガールとは、ファッションをはじめ身にまとった雰囲気が、いかにも「森にいそうな女の子」のことだ。当時流行っていて雑誌で特集も組まれていた。中学生だった息子も「それじゃあ僕は森ボーイになる!」と続いた。
これはお笑いでいうところの三段オチの振りではないか?何か気の利いた言葉で落とさないと…だが先を越された。間髪を入れずに妻が言い放ったのだ。
「私は森三中になる!」
お笑いは瞬発力だ。やはり妻には敵わない。それに見た目はもちろん笑いのセンスまで、いまも森三中に寄せ続けている有言実行の妻。もはや本家を超えている。
一方で言い出しっぺの娘は結局、「ふわっ」とした雰囲気の森ガールではなく、自己主張の強い、そして行動力のある台湾ミセスになった。
少なくても10代までの娘は、どちらかと言えば妻より私に似ていて「どんくさいなぁ」と言われるタイプだった。「森ガール」になるためにはそれなりの資金が必要。高校生の娘は一念発起してアルバイトを始めたが、キャラ強め、いつもキツい口調で接してくるギャルのような先輩に散々泣かされて辞めた。
実社会の洗礼はかなり強烈だったらしく、バイト先に制服を返しに行ったのは妻だった。
それが今では、少々備後弁なまりの入った中国語を駆使して、台湾で丁々発止のやりとりをしている。アラサーという年齢もあるのだろうが、メンタルも強くなったようだ。妻がそう言うぐらいだ。大したものだ。環境が人を変え、経験が人を強くするのだ。
娘が台湾でどのようなファミリーヒストリーを作っていくのか、とても楽しみだ。
君と好きな人が百年続きますように
「私の箱子(シャンズ)」 一青妙(ひとと・たえ) ちくま文庫
ほのぼのとした家族エッセイと思っていたが、違っていた。台湾屈指の名家「顔家」の長男である父と日本人の母をもち、自身も幼少期を台湾で過ごした著者が、家族のルーツを手繰っていくファミリーヒストリー。
息子は、森ボーイではなく「WORKMAN」ファッションが似合う工業系男子になった。女子より男友達といる方が楽しいようで、頻繁に男子だけのリモート飲み会をしている。ネットで調べると女子と交流しない男子を断食男子と呼ぶらしい。父親としては何だかつまらない。早くカワイイ彼女を家に連れて来んかな~
息子のファミリーヒストリーは、これからだ。