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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2020/09/19 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
フィクション
沖晴君の涙を殺して
著者:額賀澪
出版社:双葉社
NHKの朝ドラ「エール」の放送が再開された。新型コロナウイルスの影響で休止されてから2か月半ぶりだ。とても嬉しい。
マンションに帰ったら、どこからともなくカレーの匂いがしてきて、「今日どっかの家、カレーか・・・」と思っていたら、それは自分ちだった!というくらい嬉しい。
今週の「エール」は、梅と五郎の恋の行方がどうなるのか?「あさイチ」の華丸・大吉、近江アナウンサーも注目していた。
わが妻は、「梅は五郎を連れて豊橋に帰るのでは・・・」と予想していたが、まさにその通りになった。どうやら長年ドラマを見ていると分かるらしい。さすが年の功だと感心した。
過去の朝ドラで特に印象に残っている作品は、2010年から2011年にかけて放送されていた「てっぱん」だ。
いろいろな理由がある。主演の瀧本美織さんのプロフィールを見て妻と同じ鳥取県出身と知り、さらに娘と同じ年生まれ(誕生月は1ヶ月違い)だったことで一気に親近感がわき、勝手に親戚のおじさんのような気分になっていた。そして、なにしろドラマの舞台が、わが啓文社の地元「尾道」なのだ。
妻と同郷で娘と同い年の女優さんが、啓文社のある尾道で朝ドラのヒロインを熱演しているのだ。これは応援するでしょう。
主人公の村上あかり(名前からしてザ・尾道!)は、高校を卒業したら地元尾道での就職を希望していた。しかし、すんなりとは決まらない。
それなら啓文社で働いたらいい。尾道なら新浜店だ。本とCD、DVDもある。レンタルやTVゲームだってある。早番でも遅番でも、どちらも募集中だと店長も言っていたはず(確認はしていない)。あかりと同じ向島から通っているスタッフだっていることだし・・・
ドラマと知りながらも真剣に考えていたことを思い出した。
そして「てっぱん」も現在の朝ドラ「エール」のように放送が一時休止したことを思い出した。「てっぱん」が放送休止になったのは2011年3月12日からの1週間だった。
3月11日に起きた東日本大震災の翌日からだ。
『北の大津波で家族を喪った沖晴は死神と取引をした。死神に悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖を差し出して、独り海から生還する。残された感情は喜びだけ。笑うだけの不思議な高校生は、階段と坂道ばかりの小さな町で、余命わずかの音楽教師・京香と出会い、心を通わせていく――。ありふれた日常と感情が愛おしくなる喪失と成長の物語。』
「沖晴君の涙を殺して」 額賀 澪 双葉社
作品の中で「死に方に正解なんてないよ」というセリフがある。逆もまた真なり、これは「生き方にも正解はないよ」と言いたかったのでは、と感じた。そして「たらればで悩まないでね。」と続く。「あのとき ああしてあげればよかった」と…
この物語の舞台である「階段と坂道ばかりの小さな町」は尾道のようだ。尾道は階段と坂道だけ、ではない。海がある。その海は、あの北の海とも繋がっている。たとえ目の前に見えなくても、目に前に居なくても、思い出すことで繋がっていられる。
もっといろんな話をしておけばよかった。一緒にいてあげればよかった。あれをやってあげたら、これをやってあげれば…、「たらればで悩む」ことも含めて、思い出すことで繋がっていられる。
これまで読んだことがないタイプの作品だった。著者のプロフィールを見た。娘と同世代だった。私はこれから親戚のおじさんになった気分で、「いい本だよ。読んでみて!」と応援することになるでしょう。
上手なプレゼンが「できない」おじさんですけど・・・