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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2020/11/26 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
フィクション
いない いない ばあ
著者:松谷みよ子・文瀬川康男・絵
出版社:童心社
かなり昔のことだが、私はアイドルだった。活動期間は短く、地域限定だったので当時のことを知る人も今は少なくなったが、歌とダンス、時にはコントもこなすマルチな才能を持ったアイドルだった。
トークですべることもなかった。何か一言しゃべるだけで、周りの人が笑顔になった。いつも最前列でスポットライトを浴び、常に注目されていた。
そう、私はわが家のアイドルだった。ご当地アイドルならぬ、ご当家アイドルだったのだ。
6歳下に妹が生まれるまでは…
妹という正統派の女性アイドルが誕生したため、私は裏方に回ることになった。兄からトップアイドルの座を奪った私に、早くも引退の時が来たのだ。幼稚園の年長さんのときだった。
アイドルを卒業した私は、期待の新人である妹の付き人に徹した。だが、それは私が望んだことでもあった。知り合いの家で赤ちゃんを見て、「かわいいね~、うちにも赤ちゃん来んかね~」といったら翌年生まれたのが妹だったのだ。兄弟や姉妹がいる家では、あるある話だ。
そして両親は私のリクエストに応えてくれたばかりでなく、命名権さえも与えてくれた。だから当時、母親以外で一番好きだった女性である幼稚園の先生と同じ名前にしてもらった。私の妻は姉さん女房だが、その当時から年増…いや年上好きだったのだ。
そう考えれば、私はアイドルとは言えない。「オラの本気の恋だゾ」と、タイプのお姉さんを追っかけるクレヨンしんちゃんのような幼稚園児だったのだ。ちなみに妹の名はひまわり、ではない。
それでも「家に女の子の赤ちゃんがいる」という環境で育ったことは、大人になってとても役に立った。私にも娘が生まれたからだ。
ミルクを与える時もおむつを替える時も、「ああ、こんな感じだったな~」と懐かしく思い出された。夕方になってむずがっても夜泣きしても、赤ちゃんはこんなもんだと知っていたことは、お父さん初心者として、ちょっとした強みだった。私のことを滅多に褒めない妻も、そのことだけは褒めてくれた。
「いないいないばあ」 松谷みよ子・文 瀬川康男・絵 童心社
先日、記事の切り抜きをお持ちの男性からお問い合わせを受けた。『「いないいないばあ」が国内の絵本で初めて累計700万部(339刷り)を突破・・・』と書かれていた。もちろん在庫があり、売場にご案内した。
「いないいないばあ」は、顔を隠したネコやクマやネズミなどの動物が、ページをめくると「ばあ」と顔を出す、0歳児から楽しめる赤ちゃん絵本だ。
しばらく手にして見ていた年配の男性は、納得したように何度か頷いてレジに持ってこられた。
後で調べると1967年の発行だった。もしかしたら私は娘だけでなく、妹にも読み聞かせていたかもしれない。
「いない いない ばあ!」