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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


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本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2020/12/24 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

たこ焼きの岸本

著者:蓮見恭子

出版社:角川春樹事務所

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たこ焼きの岸本

最近の通勤電車内は寒い。密を避けるために換気の必要があるので、いつも窓が少し開いているからだ。ひざ掛けをしている女性もいる。上は着込んでいるので大丈夫だが、確かに足が冷える。レッグウォーマーの使用を本気で考えていたら、ふとプロレスラーのブルーザー・ブロディの姿が思い浮かんだ。
理由は簡単、レッグウォーマーからブロディの毛皮のレスリングブーツを連想したのだ。

大阪で大学生だった時、友人に誘われ2度ほどプロレスを見に行ったことがある。全日本プロレスと新日本プロレスをそれぞれ一回ずつ、どちらも大阪府立体育館だった。
そのころブロデイはスタン・ハンセンとタッグを組み「超獣コンビ」と呼ばれていた。その時にハンセンのラリアットも見たはずだが、実はあまり覚えていない。ブロデイの方は鮮明に覚えている。彼の第一印象が強烈だったのだ。

入場テーマ曲であるレッド・ツェッペリンの「移民の歌」(啓文社公式Twitterの中の人が解説してくれる、はず…)が館内に流れるなか、チェーンを振り回して登場したブロディ。すぐリングには向かわず、そのまま観客席に乱入しては椅子や床にチェーンを叩きつけていた。
「えっ!ホンマにこんなことするんじゃ!」逃げ惑う観客を2階席から見て驚いた。その光景が今も記憶に残っている。

兄弟タッグのテリー・ファンクとドリー・ファンク・ジュニアのザ・ファンクスも記憶に残っている。確か弟テリー・ファンクの引退興行だったように思う。「世界最強タッグ」を決める試合だったが、対するのはジャイアント馬場とジャンボ鶴田だったか、ジャンボ鶴田と天龍だったのかは記憶にない。
熱烈なプロレスファンが聞いたら、「もったいない!それぐらい覚えとけ!」と怒られそうだ。すみません、なにせ40年近く前なので…
覚えているのはやはり入場だ。テーマ曲はクリエイションの「Spinning toe Hold(スピニング・トー・ホールド)」(これも中の人が解説してくれるはず)だ。
テリー・ファンクは女性ファンも多く、ブロディとは逆にファンに囲まれていた。

ファンに囲まれると言えば、全く身動きが取れないほどもみくちゃにされて、終了後に帰ろうにも帰られない人がいた。その日に見た(新日本プロレス)一番の人気者だった。名前を訊ねると一緒に行った友人が教えてくれた。
実況の古舘伊知郎アナウンサー、その人だった。

「たこ焼きの岸本」 蓮見恭子 ハルキ文庫

大阪の住吉大社近くで、亡き夫から引き継いだ「たこ焼き屋」をひとり営む岸本十喜子。十八歳で家を出て行った息子は行方知れずのまま。だが、特製玉子サンドと珈琲が美味しい、カーリーヘアで豹柄ミニスカートの喫茶店のママ、子供食堂を併設した「キッチン住吉」の佳代など、商店街の皆と、身の回りで起きる事件を解決していく。熱々で美味しいたこ焼きが人々の心を優しく和らげる、どこか懐かしく温かく笑える下町人情物語。
第8回大阪ほんま本大賞受賞作。

読みながら大学の4年間お世話になった下宿のおばちゃんを思い出した。着いた初日、近所のスーパーと大衆食堂(タクシードライバーに人気の)、銭湯などを一通り案内してくれ、たこ焼き…ではなくお好み焼きをご馳走してくれた。
なので私にとって大阪と言えば、粉もんと下宿のおばちゃんだ。出来立てのたこ焼(実際はお好み焼き)とおばちゃんの人情、どちらも熱々で優しかった。とても懐かしい。

でも「たこ焼きの岸本」と、最初に長々と書いたプロレスにどんな関係があるのか?
それは最後まで読めばわかります。

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