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本さえあれば、 日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


2021/04/26 更新

本さえあれば、 日日平安


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くら姫 出直し神社たね銭貸し

著者:櫻部由美子

出版社:角川春樹事務所

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くら姫 出直し神社たね銭貸し

御書印を知っていますか?神社やお寺に参拝した証として頂く御朱印の書店版です。当社でも2021年4月12日より7店舗で御書印を始めました。
ご来店いただいた年月日はもちろんのこと、オリジナルの書店印を含む3つの印、そして各店が選んだ本の一節や句、メッセージなどの一筆を押印させて頂いてます。

もちろん多くの方に御書印を知っていただき、実際に集めていただきたいのですが、残念ながら他地域への移動がままならない状況です。ご来店が“いたしい”(難しい)皆様に、現在私が勤務している東広島市にあります西条店の一筆をご紹介します。

『白牡丹 李白が顔に 崩れけり』 夏目漱石

漱石は胃弱で下戸でしたが、ここ西条のお酒「白牡丹」だけは愛飲されていたようです。酒仙と呼ばれていた李白でも破顔するぐらい美味しいお酒、という意味だそうです。
ちなみに私も下戸ですが、この句を当店の一筆に選んだ我らが店長Mは、呑み助おじさんです。サザエさんに出てくる「のりすけおじさん」をもじりました。
確かに店長Mと私が並んでいると、のりすけおじさんとマスオさんのようではありますが…

でも、そんな店長Mは意外とワイルドで、時々松田優作になります。もちろん見た目ではありません。入荷したての新刊を荷解きしている時、「なんじゃこりゃ~」と叫ぶのです。色んなバージョンがあります。w、泣、怒、♥などが「なんじゃこりゃ~」の後に付きます。

マスオさんのような私でも時々松田優作になることがあります。以前店長Mから貫井徳郎「慟哭」(創元推理文庫)を勧められて読んだことがあります。結末に「なんじゃこりゃ~」と叫びました。この場合の「なんじゃこりゃ~」の後に付くのは、もちろん(驚)です。
最近でも店長Mおススメの折原一「倒錯のロンド 完成版」(講談社文庫)で叫びました。いつもどんでん返しに、してやられるのです。

「まさに、どんでん返しの見本市だ!」、井上ひさし「十二人の手紙」(中公文庫)の新しい帯とPOPに使われている店長Mのコメントです。もちろん当社だけでなく全国の書店の店頭で見ることが出来ます。このコメントで「十二人の手紙」は全国的に売れて重版されました。
そうです。店長Mは、だだの呑み助おじさんではありません。実はすごい人なのです。

ぶっちゃけると、そんな全国区の店長Mに何とかあやかりたいと思っています。POPに私のコメント(帯ではありません、悪しからず)を使って頂いた作品が出版されたからです。

書き出しでファンタジー?かと思ったら、再起を図ろうとしている訳ありな人たちとの人情話は、時代小説ならではの”しみじみ”が味わえました。そして、このままほっこりした結末で終るのかと思いきや…

「くら姫 出直し神社たね銭貸し」 櫻部由美子 ハルキ文庫

下谷にある〈出直し神社〉には、人生を仕切り直したいと願う人々が訪れる。縁起の良い〈たね銭〉を授かりに来るのだ。神社を守るのは、うしろ戸の婆と呼ばれる老女。その手伝いをすることになった十六歳のおけいは、器量はよくないが気の利く働き者だ。ある日、神社にお妙と名乗る美女が現れる。蔵茶屋の商売繁盛を望む彼女が授かったのは大枚金八両。さらにうしろ戸の婆は、お妙に相談役としておけいを連れていくように言い、おけいには「蔵に閉じ込められたものをすべて解き放ってくるように」と耳打ちして ― 。読み応え抜群の時代小説。

時代小説ではありますが、ファンタジー、ミステリーとこの作品には色んな味わいがあります。また菓子職人の技、庭師や植木職人の技、現代風に言えばカフェがオープンするまでの業者さんを巻き込んでの様々な工夫、試み、アイデアが盛りだくさんです。
なにより、ラストまでグイグイ読ませる著者の職人技を堪能することができます。

「くら姫」、面白いです。何度でも言います。全国の皆さん、櫻部由美子「くら姫」、是非よろしくお願いいたします。
ちなみに私は、角川春樹事務所の回し者ではありません。人畜無害、啓文社のマスオさんです。年齢は波平さんをとっくに越えましたが・・・

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