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本さえあれば、 日日平安

本さえあれば、 日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


2021/06/19 更新

本さえあれば、 日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


コミック

ぼくのお父さん

著者:矢部太郎

出版社:新潮社

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ぼくのお父さん

私の愛車は、今は軽自動車ですが、その昔はトヨタのステーションワゴン(ビスタ・アルデオ)でした。息子が3歳の頃から約15年間乗っていました。
息子が幼稚園に通っていた時は尾道の店舗に勤務していたので、出勤途中に園まで送っていました。朝早かったので、息子がほとんど毎日一番乗りでした。

子どもたちを乗せて遊びにもよく行きました。普段はメモリアルパークや春日池など近所の公園ですが、時には遠征しました。
グリーンライン沿いにある福山ファミリーパークには、鹿やクジャクも居て動物好きの息子は喜んでいました。尾道にある「びんご運動公園」のソリ滑りは傾斜がきつく大人にとっても結構スリリングですが、お転婆娘の大のお気に入りでした。
ちなみに「親譲りの無鉄砲で子供のころから・・・」、夏目漱石『坊ちゃん』の冒頭を「母親譲りの・・・」にしたら、わが家の母娘になります。

妻の実家は鳥取です。帰省の時は瀬戸内海から日本海へ向け、中国山地を縦断するドライブです。妻が『こっちの方が近道だから』と言う、くねくね曲がる細い山道を走ります。それでも途中休憩も併せて3時間ぐらいかかります。
始めのうちは、子どもたちと“なぞなぞ”や“しりとり”などをして遊びますが、すぐ飽きます。そんな時は童話や昔ばなしの朗読CDを聴きます。夜遅くなった帰りに、真っ暗な峠道で「安寿と厨子王」(「山椒大夫」森鴎外)を聴いていて、ものすごく怖かったことを覚えています。

その愛車も、息子が運転免許を取るという時に乗り換えました。4人家族で一人一台となってしまうので、維持費を考え泣く泣く軽自動車にしました。でも、ちょっと判断が早すぎました。
「一度はお父さんの車を運転してみたかった…」

前から憧れていたのに、と残念そうな息子。もちろん、憧れていたのは父である「私」、ではなく私の「車」です。車にまつわる楽しかった出来事が、憧れをより煌めいたものにしていたのではと感じます。

でも嬉しいものです。自分が好きなものを、息子も同じ思いで見ていてくれたこと。
何より、楽しかった想い出を今も共有できているのは、家族だからこそ味わえる幸せです。

「ぼくのお父さん」 矢部太郎 新潮社

本書は「大家さんと僕」の著者・矢部太郎さんが、絵本作家、紙芝居作家であるお父さんと自身の幼少期の想い出を描いたコミックエッセイです。
何をしてもちょっぴり切ないオチがついてしまうお父さん。変テコなところが愛おしくて、私には理想のお父さんに見えました。
心温まるエピソードばかりですが、なかでも好きなお話をひとつご紹介します。

太郎くんの家には、お母さんとお父さんとお姉ちゃんがいます。朝、お母さんは仕事に行きます。お姉ちゃんは学校に行きます。そして、お父さんは太郎くんと一緒に、家にいます。

お父さんはお皿を洗って掃除機をかけ、洗濯機を回します。洗濯物を干し終えると太郎くんを自転車に乗せて公園に向かいます。自転車は後ろにカゴが付いている三輪車で、太郎くんはカゴの中に乗ります。
後ろを向いて座っている太郎くんには、街がぐんぐん流れて行くように見えます。まるでワープしているようです。

後ろ向きよりもっと好きなのは、上を見ることです。雲がどんどん流れていきます。空に吸い込まれていくようです。でも見上げ過ぎて、ひっくり返って自転車から落ちてしまいました。道路に取り残された太郎くん。
お父さんは・・・、気づきません。

落っこちたくない太郎くんは、お父さんに「車、買おうよ」と言います。「車は高いからね」と答えるお父さんに、「がんばって働いて!みんな乗ってるよ」と文句をつける太郎くん。

「買えないんじゃない、買わないんだ。みんな一緒じゃつまらないじゃない?」

達観したかのように答えるお父さんですが、お母さんが明かした本当の理由は・・・
本書でご確認ください。

お父さんとお母さんの“なれそめ”を描いた、「お母さんの床屋さん」のエピソードも大好きです。出会いからして“ほのぼの”感が満載です。とてもチャーミングなお二人です。
ベタですが、次の作品は「ぼくのお母さん」でお願いします。

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