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本さえあれば、 日日平安

本さえあれば、 日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


2021/06/20 更新

本さえあれば、 日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

お腹召しませ

著者:浅田次郎

出版社:中央公論新社

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お腹召しませ

私は独り言が多いようです。一緒に作業をしていたスタッフから指摘されました。いま当社のコミック担当者ならお分かりでしょうが、事前にカウントしておくべき例の件を処理していた時です。
ミスがあってはいけないので慎重に、ひとつずつ確認しながら進めていたのですが、すべて声に出していたようです。横で作業していて、さぞやご迷惑だったことでしょう。
どうもすみません(>_<)

妻からは寝言が多いと言われます。うるさくて目が覚めてしまうそうです。そんなに大きな寝言なのでしょうか?自覚はありません。でも迷惑をかけているようなので、一応は妻に謝罪しました。

しかし謝って損しました。妻は笑いながら、こう続けたのでした。

『「うるさい!」と蹴りを入れたら、いっぺんで静かになったんよ。今度からそうしょ~』

最近は朝起きた時に、足やら腰やら身体が痛むことがあります。どうも年齢のせいばかりでもないようです。

妻は鳥取県出身、私は広島県。戦国時代なら、尼子家と毛利家の領民としておたがい敵対関係にあります。時代が時代なら、夫婦にはならなかったでしょう。それ以前に、めぐり会うこともなかったでしょう。
今晩、寝言で言いそうです。「時を戻そう…」

「お腹召しませ 新装版」 浅田次郎 中公文庫

本書は、幕末から明治初年にかけての武家社会を舞台にした短編集です。
表題作のタイトル「お腹召しませ」は、主人公の高津又兵衛が二十五年も連れ添った妻から言われた、笑うに笑えない一言です。

又兵衛は三百石の旗本の家から婿をもらい、願ってもない良縁と喜びます。しかし婿の与十郎はこともあろうに藩の公金に手を付け、女郎を身請けして逐電してしまいました。
責任をとって切腹すれば、幼い孫を跡継ぎにして家は残ると重臣の留守居役に言われ、又兵衛は苦悩します。

家の存続のために切腹の命を受けた又兵衛。妻も娘も悲しんでくれるはず・・・
でも、いささかの動揺も見せず「お腹召しませ」と迫る二人。そればかりか、死装束を着せて実に手際よく切腹の準備を進めるのです。
又兵衛が最後に下した決断とは・・・

「又兵衛どうするんじゃろうか?」、わがことのようにハラハラしながら読みました。その他、「安藝守様御難事(あきのかみさまごなんじ)」は、芸洲浅野家のお殿さまの話です。こちらも笑うに笑えない内容でしたが、広島藩のことなので身近にも感じられました。

また、それぞれ短編の前後に、著者がその話を書くに至ったきっかけや裏話が綴られています。
小説とエッセイ、どちらも絶品です。まさに二刀流、笑って泣ける浅田ワールド全開の短編集です。

もしも、あくまでも仮定の話ですが、寝言で妻以外の女性の名前を言ってしまったら、私はどうなるのでしょうか?もちろん蹴りを入れられる、だけでは済まないでしょう。
( ゜_゜;)ひぃぃぃ

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