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本さえあれば、 日日平安

本さえあれば、 日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


2021/07/06 更新

本さえあれば、 日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

著者:赤川次郎

出版社:KADOKAWA

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夜

「怖い本はどこですか?」、小学生と思しき女子二人組から質問を受けた。確かに、そろそろ怖い本が売れる時期だ。でも実のところ、小学生にとって季節は関係ない。その年頃は、怖いものや危ないものに惹かれるのだ。それは不良っぽい男子がモテるのと同じ理由ではないだろうか。

児童書売場の「本当にあった怖い・・・」といった読み物を集めたコーナーに二人をご案内した。するとさらに「この中で一番怖い本はどれですか?」と聞かれ答えに窮する。どれ一つとして読んだことはない。怖さのレベルが分からない。とりあえず「MAX」とか「DX」とタイトルについているものをお勧めしてみる。
女子小学生に「おじさんには、その質問が一番怖いんだよ~」と言ってもウケず、落ち込む私は少し大人げない。

ちょうどあの年頃、小学生だった私が怖かったもの。それはお化けや妖怪の類ではなく、おじさんの私に物怖じせず質問してきた彼女達のような、同級生の女子だった。
同い年なのに、なぜか年上に思えた。しっかりしていて、少なくても私よりは“大人”だった。「ちょっとそこの男子!」と言われてはビクついていた。
「春夏秋冬 女は怖い~なんにもわるいことしてないのに~」(吉行淳之介/光文社)といった気持ちだった。

私より背が高い女子も結構いた。彼女たちは勉強も運動もできた。体育のリレー練習で私を追い抜かしていったツインテールのあの子、今ごろどうしているだろうか?アイドルのように可愛かったあの子は?
でも同い年だから、みんな来年還暦か…と言ったこの瞬間、私は同級生の女子全員を敵に回したかも知れない。

「敵」で思い出した。クラスの女子は、数人の仲良しグループがあり、そして対立していた。郷ひろみ派と西城秀樹派に分かれていたのだ。放課後、教室に残り言い争っているところを目撃したことがある。自分たちの“推し”の方が絶対カッコいい!と黒板にそれぞれの良いところを書き出しながらエキサイトしていた。人数的には秀樹派が多かったように思う。どちらもムキになっていて今にも掴みかからんばかりの姿に、女子とは怖いものだと心底思った。
ちなみに私は野口五郎が好きだ。派手さはないが、歌唱力は抜群。「甘い生活」は名曲だと思う。キーが高くて歌えんけど…

さらに怖いのは、「こっくりさん」(ご存じない方はネットでお調べください)にハマっている女子だ。集中しているその姿は、ちょっとアブない感じだった。「こっくりさん、こっくりさん・・・」と質問している内容は、時に恋愛問題だったりした。やっぱり女子の方がずいぶん大人だったのだ。

何か怖い話を読みたくなり、赤川次郎・著「夜」(角川文庫)を読んだ。現在各店で実施中の「啓文社スタッフおすすめ本フェア」第2弾に選ばれている中の1冊だ。

「子どもだった私は恐怖のあまり玄関の鍵を確認しに行きました。」
本書をおすすめ本に選んだ啓文社コア神辺店Hさんのコメントです。いやいや、この話は大人でも怖いですよ。

突如、大地震に襲われた〈町〉。道路が遮断され、15軒の家が完全に孤立した。サラリーマンの辻原、その妻で不倫中の桂子、子どもを守る主婦の容子・・・。様々な事情を持つ人々を、「夜」が包み込む。これ以上ひどいことはないだろうと思われた。しかし完全な闇の中、人間ではない「何か」が人々を狙う。一人、また一人と犠牲者は増え…。極限下の人間の恐怖、混乱、死、そして強さをサスペンス色豊かに描き出す、パニック小説の傑作。

初版は昭和59年、もちろんスマホもインターネットもない時代。頼みのラジオも壊れ、〈町〉以外の状況が全くつかめない。外部との連絡の手段がないので恐怖が倍増する。また襲ってくる人間ではない「何か」も、正体が分からないから恐怖がさらに倍増。
しかも、恐ろしいのは孤立していることや襲ってくる「何か」だけではない。そこに残された人々。その全員がいい人、とは限らないのだ。

この物語は映像で見るより読む方が怖いだろう。赤川次郎はすごい。さらに言えば、この本を「子どもだった」頃に読んだというHさんは、もっとすごい。もはや子どもではない。大人じゃん!

お知らせです。啓文社では毎年恒例の「日本一短い感想文コンクール」を実施中です。「この本は良かった」、「この本を誰かに勧めたい」、その熱い気持ちを30文字に込めてご応募ください。「啓文社スタッフおすすめ本フェア」第2弾からお選びいただけると嬉しいですが、もちろんどんな本でも構いません。是非!

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