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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2021/07/14 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

まだ人を殺していません

著者:小林由香

出版社:幻冬舎

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まだ人を殺していません

『子どものころはよかった』『子ども時代に戻りたい』という言葉に驚きます。
ほんとうに?
あの無法地帯に戻りたい?
大人のような抑止力をまだ持たない、野生の獣たちの群れへ?

父親が殺人を犯し、自らも「悪魔の子」と噂される少年、良世。
亡くなった姉の子である良世を引き取る決心をした翔子。

子どもを育てるということは、一瞬、一瞬が決断の連続です。
息つくひまもないほどに何かを選び、もう一方を捨てていきます。
振り返って、取り返しのつかないことをしてしまったと愕然とすることがあっても、もう後戻りも、立ち止まることもできないように思えます。

いっそ、ずっとうちにいて、わたしだけがずっと守っていられたら。
そうすればもう、誰かに傷つけられることも、誰かを傷つけることも永久にない。
ずうっと、おなかの中で守っていられたら良かったのに。
こんな世界に生み出してしまって、この先ひとりで歩かせなければならないなんて耐えられそうにない。

そんな風に考えてしまったことが、わたしにはあります。

人は怖い。自分のことでさえ疑わしい。
この本を読んで、そんなわたしの中にも揺らぎのない想いを見つけることができたような気がしています。
物語に出てくる全ての苦しみに、祈らずにはいられませんでした。
苦しい。けれどもずっとこの先も読んでみたい。
そんな物語です。



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