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本さえあれば、 日日平安

本さえあれば、 日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


2021/07/18 更新

本さえあれば、 日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

マイナス・ゼロ

著者:広瀬 正

出版社:集英社

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マイナス・ゼロ

いま二刀流で活躍していると言えばMLB、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手、そして啓文社西条店、われらが店長Mです。
店長Mは、ご存じのように「書く」、「話す」の二刀流です。「書く」のは文庫解説や書評、「話す」のは地元FMラジオで本の紹介、先月は「広島本大賞」の紹介でRCCラジオにも出演されました。これを二刀流と言わずして何と言いましょう!
あっ、忘れていました。「書く」、「話す」、「呑む」の三刀流でした。

これまでに店長Mが書かれた文庫解説は9冊。そのうち私が読んだのは、「さよならのためだけに」(我孫子武丸/徳間文庫)、「下町の迷宮、昭和の幻」(倉阪鬼一郎/実業之日本社文庫)、「ドミノ倒し」(貫井徳郎/創元推理文庫)、「手塚治虫とトキワ荘]」(中川右介/集英社文庫)の4冊です。
でも9冊のうちの4冊って、ちょっと微妙です…

「さよならのためだけに」は2012年10月21日、「手塚治虫とトキワ荘]は2021年5月21日の当HP「おすすめ本」でもご紹介しています。お暇な時にでもお読みいただければ幸いです。

また手元にある「ドミノ倒し」は著者のサイン入りです。為書きには2016年7月15日とあります。啓文社BOOKS PLUS緑町店での「貫井徳郎先生トークショー&サイン会」に参加した時に書いて頂いたものです。このトークショーでMCを務め、名司会者ぶりを発揮したのも店長Mです。
何か、まるで店長Mの追っかけみたい?

「マイナス・ゼロ」 広瀬正 集英社文庫
1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というものだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械 — それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだった。時を越え「昭和」の東京を旅する浜田が見たものは?
失われた風景が鮮やかに蘇る、早世の天才が遺したタイムトラベル小説の金字塔。

主人公は自身が生まれた頃の時代に行き、ある家族と出会い、その家に居候することになります。その当時の生活感に溢れる描写を読んでいると、まるで昔のフィルムを最新技術でカラーにして見せてくれているように、リアルに目の前に現れます。
街並みの風景、生活習慣や流行、カメラやラジオ等の当時最新式だった機器や自動車のメカニズムについてのマニアックな記述もあり、もちろん私もまったく知らない(私が生まれた昭和30年代も出てきます)時代の息づかいが聞こえてきます。

また、その居候している家族とのやりとり、特に二人の幼い子どもたちとの日常生活を描いた場面では、これがSF小説ということを忘れていました。例えば、「居候のおじさんと僕」と言ったタイトルの、ほのぼのとした家族小説を読んでいる様でした。
もちろんタイムトラベルにつきものの過去を変えてしまうことへの考察があり、SF小説に間違いありません。明るく元気な高度成長真っ只中、当時の日本で、そしてこの著者しか書けない作品だと感じます。

「タイムトラベルSFの名作であると同時に、昭和へのノスタルジーも溢れている傑作。それでもSFの名作」

本書は、現在各店で展開中の「啓文社スタッフおすすめ本フェア」第2弾で紹介されている1冊です。フェアオリジナル帯には、「西条店Mお勧め」とあります。もちろん、このコメントは二刀流、いや三刀流のあの人です。
なので、当然のように面白いです。500ページを超える長編ですが、一気読み必至です。

そして「啓文社スタッフおすすめ本フェア」第2弾では、私も「この世にたやすい仕事はない」(津村記久子/新潮文庫)を紹介させて頂いています。ちなみにフェアオリジナル帯のコメントは、『書店でも「たやすい」仕事はない。だが「たのしい」仕事はある。それはフェアの選本♡』です。
本の内容には全く触れていないコメントです。ご了承ください。ただ当HP「おすすめ本」の2020年10月3日にもコラムを書いていますので、そちらをお読みいただければ嬉しいです。本の内容にも触れていますので…

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