お笑い芸人で芥川賞作家のピース・又吉直樹さんが今春にテレビで紹介してから、１０年前に刊行された本書が売れ続けています。中・高校生向けのレーベル「ちくまプリマー新書」ですが、老若問わず読まれているということは、それだけ人付き合いに悩んでいる大人が多いということでしょうか。
　宮城教育大学副学長で社会学者だった著者の小学生の長女が学校で友人関係に悩んでいたことが執筆のきっかけだったそうです。その著者は２年前に、そしてその５ヶ月後に長女も病気で亡くなられて、本書中の挿絵の女子高生が手にしているガラケーに１０年の月日を感じます。しかしながら本書が蒔いた種は、SNSでいつでも誰かとつながる環境になった今、「友だちが沢山いる」ことや「みんな仲良く」といった価値観に縛られて、人付き合いに息苦しさを感じる人の中で花を咲かせているのでしょう。人間関係を見つめ直したい人にお薦めします。