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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2021/09/08 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

るん(笑)

著者:酉島伝法

出版社:集英社

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るん(笑)

スピリチュアルと科学が逆転した、心の絆が生み出すユートピア・ニッポン!
今日から平熱は38度です。
と帯に書いてあったけど、もうこのばかばかしさを笑う余裕がありません。
こわい、こわいこわいこわいこの小説!

この小説が雑誌に発表された2015年から2020年1月までは、迷信が科学を駆逐してしまったユートピア(ディストピア)の恐ろしさ、ばかばかしさ、皮肉に笑えたかも。
でも今はなぁー。

日常が、すべてひっくりかえってしまった後。
怖がるのにも、我慢し続けるのも疲れてしまった。
みんなで輪になって掴み合っている。引っ張り上げているのか、引きずり落そうとしているのかもうわからない。
みんな口を開くたび、ひとりひとり別々の『真実』が口から飛び出すから、仲の良い人とも気軽なおしゃべりもできなくなった。
指先は荒れ続ける。
ぜんぶ悪い夢のよう。

そんな時に読んでしまったこの小説は、閉じた後もじくじくとページの隙間から物語が漏れ出しているようで薄気味悪いです。
ディストピア小説好きなのに、今はぞっとするのを楽しむには何かが迫ってき過ぎています。
るん(笑)…かぁ~。
特に『千羽びらき』が怖かった。わたしはこんな、大きな回路に組み込まれて、ぎりぎりと最後の一滴まで搾り取られるような人生だけはいやだ。でもこんなにいやだと思うのはわたしが、いや誰しもかな?何らかのグループに組み込まれて、ゆっくりと、痛みに気づかないスピードで引き絞られている真っ最中だからなのかもしれない。

できる限り、自分を振り返って確認し続けたいと思います。

こんな感想文ですが、すごく好きです。
漢字や言葉のちょっとずつ違うところも好き。
もうすでに読み返しています。うわ、こわいこわい!



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