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いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2021/09/22 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
ノンフィクション
うそをつく子 助けを求められなかった少女の物語
著者:トリイ・ヘイデン
出版社:早川書房
『専門でそういったお仕事をされているんですか?』
保育士、臨床心理士、教師の人に、別々の場所で同じようなことを言われたことがある。
わたしはしがないパートタイムジョブの書店員で、子育てもさっぱりわからないから、勧められるがままに相談の場所に来ているだけ。とりあえず誘われたら行く派なだけ。
教育も児童心理も医学的なんも全部しらん。読むジャンルにも入っていない。
なのになんで、子どもへの対応が適切だと毎度言っていただけるのだろうか…。
わたしは、むかしむかし、誰に教えてもらったのだったか。
10代の頃、ほかのみんなと同じように自分の内外の壮絶な嵐に前も見えないくらいだった。
わたしの嵐は、ほかの子たちより無軌道でパターンも読めなくていつも自分自身から振り落とされそうだった。
そんな頃『シーラという子』を読んだ。
トリイは、じっと待った。
トリイは、話を聞いた。
トリイは、ありのままを受け入れた。そのままではあまりにもいびつなものでも。
トリイは、いくつもの間違いをした。そしてそれをそのまま本に書いた。間違いも彼女だから。
トリイは、愛した。子どもたちや、自分自身を。
最初はただ驚いた。
ひとりの人間の人生を、本気で救おうとしている。その人を一生救い続けるのは不可能なのに。
そして気が付いた。その人の人生を救い続けることができるのはその人自身なんだ。トリイは彼らに自身を救う最初の何歩かだけ、手を引き、背中を押しているのだと。
そのまま歩いていけますように。
わたしはトリイのようにしてみた。
わたしを、じっと待った。
わたしの気持ちをじっくりと聞いてみた。
わたしの好きなこと、嫌いなことを考えた。
わたしを愛し、大事にした。甘やかしているくらいに、わたしの望みをかなえてあげた。
そして嵐は過ぎ去り、毎日とてつもなくしあわせで、超絶わがままなわたしが爆誕してしまった…。
そうか~、トリイみたいにやっていたのか。すっかり忘れていた。
自分の子にも同じようにやっていたのか。たしかに、待つのは得意かもしれない。
トリイと出会ったたくさんの子どもたちも、覚えていなくても、トリイのやりかたで自分自身をずっと救い続けていったんだろうな。
それにしてもトリイはすごい。
自分の子どもでさえ時々…………なのに!!!
284ページを読んで目から涙びゃっ!!と出ました。トリイすごい、やばい。
まだわたしを救いにかかってくるじゃん。