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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2021/10/22 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

夜が明ける

著者:西加奈子

出版社:新潮社

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夜が明ける

この物語の主人公とは2歳違いだ。

ここから逃れたくて本を開くのに、本の中に全く同じ景色(地獄)が広がっている。
なんでこんなの読まなきゃならないの。この色は知っているから。同じ時代を、同じ暗闇をずっと手探りで這いまわってきたよ。物語の中でくらい、もうちょっと別の景色が見たいよ。

わたしたち(と、世代でまとめるのは乱暴だけど)の苦しさ。
なぜ?と感じる親世代への怒り恨み。下の世代への自由さ正直さへの妬み嫉み。
前も後ろも道がなく、「普通」は高価過ぎて手が届かない。なんにも踏み外していないのに足元は薄い氷のようにひび割れている。年を追うごとにびっくりするくらい生きづらい規則が増え続けて、誰がクリアできるの?チートないと無理よ!な無理ゲー状態。
ここに「いる」だけで場所代えげつない。存在料払えない。
定年後のために段ボール集めるしかないね 笑 って笑えない冗談を聞いた。
こんなわたしたちが「夢」を持つのは贅沢が過ぎるでしょうか。

他人からみたらなんてくだらない夢、かもしれない。
でも夢の中にいるって、こんなにもしあわせなのか。
彼らが見る先の、真っ暗闇。まだ夜は明けないのに、その気配だけで。

もしかしたら、もうすぐ。
今が一番深い闇の中なのだとしたら。
もう少し、立っていようか。
もう少し、見続けていようか。
ふいに誰かに体を支えられたような、そんな小説です。





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