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あなたも3分でミステリ通になれる(仮)
政宗九がおすすめする本です。
某店店長でもあり、ミステリマニアとしても知られる「政宗九」によるミステリコラム。
これを読めば、あなたもミステリ通です。
2021/09/18 更新
あなたも3分でミステリ通になれる(仮)
政宗九がおすすめする本です。
文庫
本屋の新井
著者:新井見枝香
出版社:講談社
書店で働いているので、ご多分に漏れず、本を買うのは大好きです。
主に買っているジャンルは3種類。
「小説」(主にミステリ)、「ノンフィクション」(新書が中心)、そして、「書店・出版業界の関連本」です。
今回は書店・出版業界関連本から、文庫の新刊『本屋の新井』(講談社文庫)を紹介します。
新井見枝香さんは業界人なら知らない人はいないかもしれないくらいの有名書店員。芥川賞・直木賞が発表される日に、個人で勝手に決めた賞「新井賞」を発表し、時に芥川直木よりも話題になったりします。現在も書店に勤務しながら、ストリッパーとしても活躍している、まさに型破りで異色の書店員です。
『本屋の新井』は彼女が某大手ナショナルチェーンの書店員だったころに、出版業界紙に書いていたコラムをまとめた本です。現場から本部勤務になって苦悩したり、また現場に戻った喜びを書いたり、当時の心の動きも窺えますが、なんといっても文章が面白い。もちろん本の話が多いのですが、押しつけがましくなく、でも彼女の推しが気になってくる、そんなコラムです。
今読むと発見もあったり。「書店はいつまで紙袋を無料で提供できるか」「袋を有料にしたら、書店の経費はどれだけ削減できるだろう」そう、まだレジ袋有料義務化になる前から、この問題提起をしていたのです。すごい慧眼。
また、食品スーパーのように本に「値引シール」が貼られる時代はいやだ、というコラムにはこんな名言も飛び出します。
「見切り品は魅力的だが、つい惑わされて、本当に欲しいものを見失ってしまう」
新井さんの感性は、書店業界が手放してはいけないものだと、本気で思います。