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Slow Books ~コトバのあや~

Slow Books ~コトバのあや~

高垣亜矢がおすすめする本です。


日本人が奏でる『コトバの音符』。言葉が織りなす模様“言葉の文(あや)”日本人が使う巧みなコトバ、本の中に見え隠れする「コトバのあや」
本をじっくりと読んでいると、その中に光る作者の巧みなテクニック。高垣亜矢さんの視点で捉えた“コトバのあや”を紹介します。

2009/03/25 更新

Slow Books ~コトバのあや~


高垣亜矢がおすすめする本です。


文庫

なんとなくな日々

著者:川上弘美

出版社:新潮社

定価:380円

なんとなくな日々

 岩波書店から出ていた幻のエッセイ集が、10年の時を経て待望の文庫化。筆者もあとがきで書いていますが、10年という間、何が変わって何が変わらなかったのか読み返しつつ確認したそう。
 10年。生まれたての赤ちゃんが小学校5年生になるんですよ。あたりまえのことなんですが、驚きです。10年……私はなにか変わったかしら。なにか得たかしら。

 すみません、話がそれました。

 ちゃんとしたエッセイは書けっこない、と言いながらも、“なんとなくな日々”とゆるゆるなタイトルにしながらも、独特な視点と言語感覚はぶれていないのがニクい。
 だいたい、書き出しひとつとっても、うまい。
「デートした。
 男の人、とである。 」
「夏休みである。」
「あまのじゃくについてである。」
「松茸を食べることにした。」
 書き出しというのは、気合いの入るものなのに、このゆるゆる感。これが絶妙で、川上世界にするりと引き寄せられる。そして最後の一行(これまた予想もつかないオチが多い)で、「はい、このお話はおわり。現実世界へお帰り。」とでも言われたかのような感覚におちいる。

 独特の言い回しで日常(非日常?)のおかしみを伝える本作は、ゆるりとした春に読むのにちょうどいい。
 もっといえば、桜の木の下で。ちょっぴりお酒を呑みながら。川上作品を読むと日本酒が呑みたくなります。日本酒なんて呑めないくせに、という声が聞こえてきました。だから、ちょっぴり、なんです。ゆるゆる、とね。

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