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Slow Books ~コトバのあや~

Slow Books ~コトバのあや~

高垣亜矢がおすすめする本です。


日本人が奏でる『コトバの音符』。言葉が織りなす模様“言葉の文(あや)”日本人が使う巧みなコトバ、本の中に見え隠れする「コトバのあや」
本をじっくりと読んでいると、その中に光る作者の巧みなテクニック。高垣亜矢さんの視点で捉えた“コトバのあや”を紹介します。

2009/02/09 更新

Slow Books ~コトバのあや~


高垣亜矢がおすすめする本です。


ノンフィクション

尾道…セピア色の記憶

著者:尾道絵葉書発掘プロジェクト

出版社:尾道学研究会

尾道…セピア色の記憶

小学校3年の時だったと思う。
“きょうど おのみち”という教材で、古い尾道駅前の写真を初めて見たのは。
「これは今の市営バスで…。」先生の解説を聞きながらも、ココロはすでに教室からその写真の昭和初期へタイムスリップ。小さなアタマで空想するのが楽しくて、もっともっと古い写真が見たくてたまらなかった。知るはずもないのに、なぜあんなにわくわくしたのだろう。
 そんなことを、このたび刊行されたこの本を手にした時に思い出した。表紙がその写真だったからだ。中をひらくと、あの頃の自分に見せたら嬉しがっただろうなぁと思うほど、たくさんの写真がつまっていた。
 143種もの尾道絵葉書が、鉄道・公共建築物・銀行・学校・尾道港など17のテーマに分類され、それぞれ解説がなされている。尾道は、地方都市のひとつにすぎないのに、こんなにも絵葉書があることに驚くばかりである。今でこそ観光都市で名を馳せているが、これほどまでに明治後半から大正、昭和初期までのものがあるということは、やはりその当時の尾道の持つ繁栄力というか都市力の強さを証明しているのだろう。
 写真を1枚ずつ見ていると、得も知れぬ力強さを感じる。さらに、汽笛や、桟橋の音、人びとの笑い声、風の音までもが聞こえてきそうだから不思議だ。また、写真はモノクロもしくはセピア色ではあるが、その当時は今と同様に色があったはずだ。その当時の人びとはモノクロの世界で生活をしていたわけではないのだから。海の色、空の色、山の色、浄土寺の朱の色、千光寺山公園の桜の色。その色を想像してみるといっそう楽しくなる。
 9歳の私が、知るはずもない古い尾道の姿の写真を見て心躍らせたのは、きっと、わくわくするような尾道を感じたからなのだろう。ひょっとしたら、その時代を生きた、私につながるご先祖様たちの血もうずいたのかもしれない。
 “学術的資料集”なんてかたく考えずに、想像力をはたらかせてタイムスリップを愉しもう。そうすれば、尾道という場所の意味やこれからの課題がおのずとわかってくるのだから。

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