おすすめの本RECOMMEND

Slow Books ~コトバのあや~
高垣亜矢がおすすめする本です。
日本人が奏でる『コトバの音符』。言葉が織りなす模様“言葉の文(あや)”日本人が使う巧みなコトバ、本の中に見え隠れする「コトバのあや」
本をじっくりと読んでいると、その中に光る作者の巧みなテクニック。高垣亜矢さんの視点で捉えた“コトバのあや”を紹介します。
2009/03/19 更新
Slow Books ~コトバのあや~
高垣亜矢がおすすめする本です。
ノンフィクション
心と響き合う読書案内
著者:小川洋子
出版社:PHP研究所(PHP新書)
定価:882円

みなさんは「Panasonic Melodious Library」というFMの番組をご存知でしょうか。
“未来に残したい文学遺産を紹介する”という画期的な番組で、パーソナリティはなんと、あの小川洋子さんなのです。小川さん自身最初は“尻込み”してしまったそうですが、“文学が主役”になる番組であること、電波を通して読書の喜びを大勢でわかちあえるのでは、という考えのもとに、この仕事を引き受けたそうです。
本書は、その番組のほぼ一年間をまとめたものです。季節感を大事に選書したそうで、春夏秋冬で分けられています。嬉しいことに、巻末にはその回の放送曲も収録されています。小川さんの大好きな佐野元春の曲もちらほら…。
選ばれた作品のジャンルはさまざま。
「蛇を踏む」「モモ」「山月記」「はつ恋」「風の歌を聴け」「ジョゼと虎と魚たち」「100万回生きたねこ」…などなど52作品がずらり。
自分の好きな作品があると、にやにや。
自分の知らない作品があると、ふむふむ。
そして何より小川洋子ワールドに通じるところはどこだろうと勝手に想像。
たとえば「片腕」(川端康成)はまさに…。(内容は読んでのお楽しみ!)
小川さんがその作品のどこに、何に、どう惹かれたのかが、わかりやすく説明されています。独特の視点で作品の場面を切り取り、小川さんの言葉で色付けされ、その作品世界がいきいきと目の前にうかびあがってくるのです。そう、いつもの小川マジックにかかってしまうのです。これでその作品にあった曲が流れようものなら、もう倒錯の世界です。
本書は“何を読もうかな”という方に「読書案内」としてうってつけの1冊。
本を文章で紹介するのにいつも四苦八苦する私には、“どういう表現で案内をするか?”というお手本の1冊でもあるのです。