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Slow Books ~コトバのあや~

Slow Books ~コトバのあや~

高垣亜矢がおすすめする本です。


日本人が奏でる『コトバの音符』。言葉が織りなす模様“言葉の文(あや)”日本人が使う巧みなコトバ、本の中に見え隠れする「コトバのあや」
本をじっくりと読んでいると、その中に光る作者の巧みなテクニック。高垣亜矢さんの視点で捉えた“コトバのあや”を紹介します。

2009/06/14 更新

Slow Books ~コトバのあや~


高垣亜矢がおすすめする本です。


フィクション

IN

著者:桐野夏生

出版社:集英社

定価:1,575円

IN

 作家と編集者、文豪とその妻と愛人の関係が交差しながら描かれ、“恋愛の抹殺”とは何かを問うています。淫、隠、因、陰、姻、INと章ごとのタイトルがつけられ、目次から桐野作品特有の深みに入っていくことを覚悟させられます。

 作中には『無垢人』という小説が挿入され、これは島尾敏雄の『死の棘』を彷彿とさせます。関係という檻の中に閉じ込められた人間の哀しみが、虚構と現実のはざまで浮かびあがります。
 “恋愛は時間の経過に耐えられずに、密かに変質していく”など恋愛の終末を表わすフレーズが多いのも特徴。
 恋愛の抹殺とは、愛から死の棘に変わる、ということなのでしょうか。

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