おすすめの本RECOMMEND

KEIBUNSHA

Slow Books ~コトバのあや~

Slow Books ~コトバのあや~

高垣亜矢がおすすめする本です。


日本人が奏でる『コトバの音符』。言葉が織りなす模様“言葉の文(あや)”日本人が使う巧みなコトバ、本の中に見え隠れする「コトバのあや」
本をじっくりと読んでいると、その中に光る作者の巧みなテクニック。高垣亜矢さんの視点で捉えた“コトバのあや”を紹介します。

2015/07/28 更新

Slow Books ~コトバのあや~


高垣亜矢がおすすめする本です。


文庫

偶然の祝福

著者:小川洋子

出版社:角川書店

偶然の祝福

 決して派手なタイプではなく、ひそやかに、淡々と、小川洋子的世界を構築してきた堅実派です。静謐な文章で現実世界を描きながら、読者を知らずのうちに異次元の世界に連れ出す技が巧妙で、作品を読むたびに、あぁまたやられた、と思いながらも身を委ねてしまう。ある意味で、危険、です。だから、この『偶然の祝福』の可愛い表紙を見て、なごみ系小説だと騙されてはいけません。犬のアポロと息子と暮らす小説家の「私」の半生を、連作小説のかたちで描いているこの作品は、「喪失」と「孤独」に満ちています。「私」が愛したモノやヒトがどんどん失踪してゆきます。「私」も読者も、哀しみによって異空間に投げ出され、二度と現実に戻ってこられないような不安におちいります。けれどギリギリのところで、小さな幸せが「私」のもとにやってきて、私たちを現実にそっと戻してくれる。それはただの偶然?偶然の顔をした必然?どん底を見たひとに、もたらされるプレゼント。見逃しては、だめですよ。

おすすめの本一覧へ